青いアンプルPhoto:PIXTA

行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱のうずに巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は中外製薬や武田薬品工業などの「製薬」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

中外製薬が「独り負け」の2桁減収
その要因となった「ある薬品」とは?

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の製薬業界4社。対象期間は22年5~9月の四半期(4社いずれも22年7~9月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・中外製薬
 増収率:マイナス21.6%(四半期の売上収益2253億円)
・武田薬品工業
 増収率:18.6%(四半期の売上収益1兆23億円)
・第一三共
 増収率:23.2%(四半期の売上収益3275億円)
・アステラス製薬
 増収率:16.9%(四半期の売上収益3804億円)

 製薬4社では武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬が前年同期比で2桁増収、中外製薬が2桁減収と、明暗がはっきりと分かれた。

 本記事とは別で取り上げる大塚ホールディングスやエーザイなども含め、本連載で分析対象とした製薬業界の計9社のうち、22年7~9月期の四半期業績が減収だったのは中外製薬のみである。

 前四半期の記事でも解説した通り、かつての中外製薬は、19年10~12月期から22年1~3月期までの10四半期のうち、実に8度の2桁増収を記録。22年1~3月期には前年同期比113.6%増(約2.1倍)という驚異的な増収率をたたき出していた。

 だが、そこから一転、直前の四半期(22年4~6月期)の増収率は6.4%に落ち込んだ。その後も増収率の低下に歯止めがかからず、今回分析対象とした22年7~9月期にはマイナス21.6%にまで急降下した。

 長きにわたって好調だった中外製薬は、なぜここにきて絶不調に陥ったのか。その背景には「ある薬品」の減収があった――。

 次ページ以降では、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、中外製薬の現状について詳しく解説する。