中国で医療手当の削減を巡り最近発生した退職高齢者による抗議デモは、同国が抱える複雑に絡み合ったさまざまな問題を象徴している。高齢化や地方財政の逼迫(ひっぱく)、社会保障制度の不備、多額の債務などの問題だ。デモの直接的なきっかけとなったのは、武漢市などの地方政府が推進する、医療補助の減額につながる医療保険改革だ。改革では、強制加入の貯蓄制度で個人口座から拠出された資金の一部が、公的な保険基金と一緒にプールされる。個人口座の余剰分の一部が公的な医療保険のために使われることになるが、高齢のデモ参加者は政府に貯蓄を奪われると感じている。中国では昨年、数十年ぶりに人口が減少に転じた。高齢化は急速に進んでおり、政府は政治や財政面でますます厳しい選択を迫られることが予想される。中国では強固な社会的セーフティーネットが構築されていないため、なおさらだ。個人が負担する医療費の割合は高く、多くの年金は微々たる額しか受け取れない。
中国の高齢者デモ、山積する問題を象徴
地方政府の医療保険改革が反発招く
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