多様化する都立進学校の姿

 私立校における中高一貫化の優位性が都立校でも発揮されていくとした場合、その帰結となるのは、日比谷や西、国立といったトップ校を、中等教育学校となった小石川が実質的に追い抜くことだろう。

 都立高校は1学年40人8クラスの320人が基本となる一方で、中高一貫校は160人と半分の規模である。2022年の東京大合格者数を見ると、日比谷の65人は突出しているが、小石川の20人を倍増してみれば40人相当となり、西を抜いて実質2位は小石川であることが分かる。東京私立男女御三家の合格を辞退しても入ってくる中学受験生が多い点を考えても、小石川が都立校の頂点となることはなんら不思議ではない。

 これに対して、日比谷は中学受験で不本意な結果になった生徒や中学受験をそもそもしなかった優秀層を、その立地の良さから集結させている。今回の学習指導要領の改定では「理数探究」が登場して自然科学系の大学進学との接続も意識されているが、日比谷では「理数探究基礎」を高1で全生徒必須にしている。都立高校の中でいち早く英語4技能を重視した授業を展開したのも日比谷である。一方で、東大一辺倒の進学には冷静であり、「アンチ・東大進学」の講演を有識者に依頼するようなこともしている。

 西は、家庭文化資本が高い地域に立地しており、教科にとらわれない充実した「土曜特別講座」が根付いている。同窓生施設を自習室として開放するなど学習支援もするが、リベラルな校風、高校生活の充実を図るなどから、必ずしも現役で大学進学を目指そうとはせず、自分のありたい姿を思い描き大学進学を目指す傾向がある。そのため現役進学率はそれほど高くないが、どっしりと構えて学習に取り組む姿勢がある。このあたりは、前述のように文化的な豊かさを求めて進学する国立にも通じる。

 都立の伝統的な進学校と中高一貫校が競い合うなかで、都立高校全体の教育が充実することを期待したい。もちろん、東大など難関大学に多くを送り込むことだけがこれからの姿というわけではない。40位国際は、国際バカロレアコースを導入するなど海外大学への直接進学といった新たな進路を示している。その人気の高さから、旧東京都職員白金住宅地跡地に「新国際高校」の新設も予定されている。

 工業高校は「工科高校」に改称が進むが、普通科ではない進学型専門高校として理工系への大学進学を重視する動きも出ている。それが、01年度に開校した科学技術(江東区)と23位にランクインしている多摩科学技術である。科学技術では「科学技術探究」として「ウルトラセブンから生命倫理を考える」などのワークショップが展開されたりフィールドワークを充実させたりしている。

 多摩科学技術では、大学進学を意識して普通科のカリキュラムと同等になるように土曜授業を展開している。また、09年度設立の27位総合芸術のように、東京藝術大などに多くが進学するユニークな存在もある。

 東京都は、大学進学を重視した高校設置に限らず、昼夜間定時制高校、エンカレッジスクールなど多様な高校を設置している。東京都の人口の多さ、予算の充実によるものだ。こうした多様な学校の設置は、他の自治体にはうらやましい限りだろう。東京一極集中の打開が叫ばれるが、人口減が続く地方との格差は今後も広がるばかりである。
 
 こうした状況のなか、東京以外の道府県の公立進学校についても、その苦悩や奮闘の様子を「国公立100大学合格力」ランキングをベースにして、今後の連載で見ていきたい。

※次回に続く