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映画『パラサイト』を機にその存在が世界的に広まった、韓国の“半地下”の住民。だが、実は韓国社会では「半地下でも“居住地”があるだけでマシ」という声もあるほど、貧困層の困窮は喫緊の課題となっている。ベストセラー韓国人作家のシンシアリー氏の著書『韓国の借金経済』(扶桑社)より一部抜粋し、韓国の貧困層のリアルをお伝えする。
『パラサイト』で有名になった
「半地下」が高くて住めない理由
半地下にすら住めない韓国貧困層の窮状を著者は韓国の新聞を引用しデータをもとに解説していく。まずは東亜日報の記事からだ。
〈……災害などに脆弱な半地下や屋上部屋、考試院(韓国の簡易宿所のこと)などいわゆる「ジオッコ」に居住する人たちに対する社会安全網の確保が急がれるという政策課題が浮上した。昨日(※2022年9月28日)このような問題に対する解法を求める専門家会議が開催され、注目を集めた。韓国住宅福祉フォーラムと韓国土地住宅公社(LH)、韓国住居福祉ソサエティがソウル瑞草区で「住居脆弱階層住居支援のための公共の役割と課題」をテーマに共同開催した討論会のことだ(※最高級団地も同じ地区にあるので、なんだか妙な気分です)……この日チェウンヒョン韓国都市研究所長は、「住居脆弱階層の居住実態と対応課題」というテーマ発表で住居脆弱階層に分類される全国のジオッコ居住者が、2020年基準で85万5553世帯に達すると集計されたと明らかにした。
考試院に代表される非住宅施設居住者が46万2630世帯でもっとも多く、地下及び半地下32万7320世帯、屋上部屋6万5603世帯だった。非住宅施設には、居住に適していない考試院とビニールハウス、コンテナ……非宿泊用施設(ネットカフェなど)が含まれる。2010年と比較して、ジオッコ居住者は23%増加した。半地下は40%近く減ったが、考試院など非住居居住者がなんと4倍近く増えた。特に非住居の代表格である考試院が2020年前後に急激に増加した。このように非住居が大きく増えた理由の一つは、無断で用途を変更して人が住む目的に使用する建築物が少なくないためだと解釈された〉
(「東亜日報」/2022年9月29日)
この部分、ちょっと書き加えたいところがありますが、「半地下で住む人が40%も減った」ということ、一見、これは「よかった」と思えます。でも、現実はそうではありません。実は、「地下層」(多くは半地下ですが、たまに本当に地下の場合もあります)」の伝貰(ジョンセ)保証金、すなわち部屋など地下層を借りるための費用があまりにも高くなったからです。すでに2021年から1億ウォン(約1000万円)を超えています。
映画『パラサイト』が公開されたとき海外のメディアは「韓国の半地下暮らし」を報じたりしましたが、韓国ネットの一角では「あれでも、ソウル地域で借りるにはかなりお金がかかる」という、あれでもまだマシだという声がありました。それは、半地下に住むためにもお金がかかると知っていたからです。関連記事、続けます。
〈……全国連立及び多世帯住宅、地下層の2022年平均ジョンセ保証金は1億1666万4823ウォンで、2017年7443万1288ウォンから56.7%上昇した。地下層も、ジョンセ保証金1億ウォン台に入った。地下層の平均ジョンセ保証金が1億ウォンを超えたのは2021年(1億315万9936ウォン)からだ。今年ソウルの半地下平均ジョンセ保証金は1億4801万8812ウォンに達した。多世代連立住宅地下層の保証金が1億ウォンを超えた状況だから、地上に上がるのはさらに難しくなっている〉
(「京郷日報」/2022年10月5日)
借りる(ジョンセ)といっても、同じソウルでも都心部と郊外では天地の差があります。いわば「どこに住んでいるのか」が大きいという側面もあります。また、広ければいいわけでもないし、高ければいいというわけでもないでしょう。ただ、さすがに「法律的に家ではないところに人が住んでいて、しかも、担当省庁は家ではないという理由で集計すらしないでいる」というのは、問題があるでしょう。
映画『パラサイト』で、その映画を作った人が半地下で暮らしたことがあるのかは分かりませんが、苦しい生活をする人たちの舞台設定とされ、外国メディアからも「こんな部屋は実在する」と驚いたりした半地下部屋が、「高くて住めない」存在になりつつあるわけです。
韓国の「生活保護受給者」は
リアルで働いたら負け
2015年の統計庁の調査では、最低住居基準未達世帯(ジオッコだけでなく他のものまで全て含めたもの)は全国に156万752世帯(全体世帯数の8.2%)となっています。しかし、2016年の国土交通部の調査では、103万世帯(全体世帯数の5.4%)と集計されています。ちなみに、国土交通部のほうが担当部署になります。
なぜ3分の1も減ったのかというと、国土交通部は考試院などを「住宅ではない」という理由で、調査対象にしていないからです(「ハンギョレ新聞」/2017年9月17日)。こんな現状だから、明確な改善策が打ち出せるわけもなく。
こんななか、20代、30代の「基礎受給者」(日本でいう生活保護者のようなもので、「国民生活保障法」によるいくつかの種類の扶助を受けている人たち)が急増しているのは、当たり前だと言えるでしょう。
韓国の20代、30代の基礎受給者は、KBS(2022年12月29日)の報道によると、2022年8月基準で24万5000人です。これは、5年前とくらべて1.7倍になった数値です。他の案件と同じく、急に増えることが、もっとも問題だと言えるでしょう。
各国、制度の趣旨は同じでも、制度そのものが同じではないので、単純比較は難しいでしょうけど、日本の場合、令和2年時点で20代・30代の生活保護受給者は約14万9000人だそうです。24万5000人だと、人口比で考えると、日本の4倍以上ということになります。







