2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけられるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つのポイントを挙げてもらった。最終回の今回は、労働市場に詳しく、民主党政権では内閣府参与も務めたリクルートワークス研究所の大久保幸夫所長に聞く。

おおくぼ・ゆきお
1961年生まれ。1983年一橋大学経済学部卒業。同年株式会社リクルート入社。1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年~2012年内閣府参与を兼任(菅内閣・野田内閣)。2011年よりリクルートホールディングス専門役員就任。2012年人材サービス産業協議会理事就任。専門は、人材マネジメント、労働政策、キャリア論。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

①女性リーダーが続々登場する
 日本でも、男性と同じように本格的に女性が活躍する時代となり、組織を引っ張る女性トップやリーダーが出てくる。

理由:2000年代前半から、企業は新卒採用で男女を均等に採用し続け、また女性が働きやすいように社内の制度を整えてきた。約10年前に新卒でキャリアをスタートさせた女性社員も経験を積み、中堅社員として第一線で活躍している。この「中堅女性」の社員の層が厚くなり、女性の管理職やリーダーが出てくる状況が十分に出来上がった。

 政府や企業自身も女性の活躍に期待をしており、今年、さまざまな取り組みがスタートする。例えば、経済産業省と日本取引所グループ(東京証券取引所グループと大阪証券取引書の合併により誕生した新会社)は、2月に女性が活躍する上場企業を10~20社程度選定し、「なでしこ銘柄」として公表する予定だ。個人投資家からの資金の呼び水にすることが狙いで、女性の社会での活躍を一層、後押しすることを目指している。

 女性の社会進出の必要性は、長年叫ばれてきたことだが、日本は世界の先進国のなかで女性リーダーの数が極端に少なく、この分野では「後進国」であった。そこへ、リーダーを担うような女性社員が十分に育ってきたということと、政府も本腰を入れ始めたということで、今年は日本でも女性のリーダーが多く生まれる環境が整ったと言える。