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インキュベーションの虚と実

ピボットは罪か必然か
カン違いせず、大胆にやる事業転換

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第21回】 2013年2月18日
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 このイベントのパネルでみられたことは、共通点が皆無なほどそれぞれの事例が違うということだ。でも、共通した大切な点は二つある。まずpersistent=粘り強く、そして大胆かつ腹をくくって取り組むこと。例えば、プロダクトのフィーチャーを落とすとか、これまでの顧客を捨てるといったことを大胆にやる。

*  *

 本カンファレンスがスタートアップから大企業まで多様なこともあり、デイビッドソン流に切ってくれた格好だ。これは、分かりやすい整理で、小から大まで様々な企業にピボットが適用できることを示している。

 ちなみに、アパレルのGAPはレコード店だった。スタートトゥデイはロックバンド活動の副業から現在のアパレル・オンライン小売りとなった。花札の任天堂がファミコンに進出したのも、当時は世を驚愕させたものだ。

 もっとも、なんでもピボットすればいいというものではない。基本を忘れたピボットも多々ある。安易なピボットは、時間と経営資源を浪費する。プロダクト/マーケット・フィットを追求することが原点であり、かつ粘り強く大胆に取り組まねばならない。それから、何をねらうかシンプルにすることだ。

 「とりあえずやってみよう」からの脱却をエリック・リース氏が唱えているように、ビジョンなきプロトタイピングは、会社を始めるには誤ったアプローチだ。

 パッションや創業者についてのコメントが、起業家経験者であるデイビッドソン氏の味が出ているところだ。そして、チームの適性は、指摘のように課題となる。ピボットで人を入れ替えねばならなくなることもある。現実論では、こうしたチャレンジにどう対処できるかが成否を分けるだろう。

 また、広義のピボットには様々なものが含まれている。ターゲット顧客の変更から、全く新たな事業に変身することまで。軸足も動いた、バスケットボールで言うトラベリングもあり、reboot=再起動と呼ぶ人もいる。ソーシャル・バーコード・サービスStickybitsから大転換したソーシャル・ミュージック・サイトTurntable.fmは分かりやすい例だ。

 ただ、分類などの整理学を超えた、現実との闘いがスタートアップであり、創造性が鍵となる。要は、初めのアイデアにしがみつかず、市場に刺さるものにしなければ、失敗ないし生ける屍になるということだ。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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