スイス金融大手UBSによる救済合併の一環として、クレディ・スイスのAT1債(その他ティア1債)の全額減損が決まったことで、裕福なアジア投資家の一部は大きな損失を被った。170億ドル(約2兆2600億円)相当のクレディ・スイスAT1債は先月、実質的に無価値となった。スイス金融当局による今回の決定は物議を醸している。アジアの富裕層の多くはAT1債に資金を投じており、中にはクレディ・スイスのプライベートバンク顧客も含まれる。AT1債は高いリターンが得られ、世界有数の大手銀行など知名度の高い金融機関が発行体となっており、裕福な個人投資家にとっては極めて妙味の大きい金融商品だった。クレディ・スイスが2022年6月に発行した16億5000万ドル相当のAT1債は9.75%の年利を確約していた。同行はここ10年、米ドルや他の通貨建てで永久債を発行しており、その中でも最も高い金利水準だった。またディールロジックのデータによると、これらのAT1債は、多くの欧米金融機関を通じて販売されていた。