職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
「熱心な営業」からの落差
ビジネスライクな人は、同僚や取引先の関係者を「仕事上だけの関係」と考える傾向にあります。
それを象徴するように、営業向けの研修をするとよく聞くのが、
「契約が成立した途端に、音沙汰がなくなった」
という苦言です。
契約を交わすまでは、手土産を持ち、何度も足を運び、さまざまな手を用いながら、熱心に営業をかけるものです。
それが、「もう大丈夫だ」とわかった途端に、パタッと連絡が途絶えてしまうと、お客さまは強い違和感を持ちます。
まさに、釣った魚に餌をやらない状態です。
気づかいは、このような「わかりやすい見返り」のためにやるものなのでしょうか。
私は違うと思います。
お客さまにとってみると、契約が決まった後の商品やサービスの利用のほうが重要だったりします。
仕事だけの関係性であることを最後に印象づけてしまうと、
「あの人を他の誰かに紹介しよう」
「あの人に任せれば安心だ」
と、思い出されることはありません。
世の中は、何がどこにつながっていくか、本当にわからないものです。
特別なことがなくても連絡しよう
ここで覚えておいてほしいのが、
「Keep in touch.(連絡を取り続けよう)」
という言葉です。
私がアメリカに住んでいた頃、別れ際によく「Keep in touch.」という言葉を耳にしました。「またね~」くらいの感覚で私も使っていましたが、ここには気づかいにおいて重要な意味が隠されていたのです。
日々の営業で忘れてしまいそうなら、ここはいっそ、連絡のタイミングをスケジューリングしてしまいましょう。
3ヵ月に一度は、顧客リストに目を通し、これまで会った人の顔を思い浮かべましょう。
そして気になったことがあれば、
「その後、使い心地はいかがでしょうか」
「どうされているかと思いご連絡しました」
と、短いメールを送ってみてください。
「たいした話題もないのに連絡するのは迷惑なのでは?」と考えすぎる人がいます。
しかし、とっておきの話題もないのに連絡するからこそ、相手に「関心を持たれている」実感が生まれるという考え方もあります。
現に、顧客離れの理由を調べたアメリカのデータでは、その第1位が「無関心」でした。
とはいえ、全員に同じことを送るような、ダイレクトメッセージのような内容なら、やる必要はありません。
あくまで、その人に感じる思いを、そのままお伝えするだけのもので大丈夫です。
その壁を越えるあなたにだけ、大きなチャンスや運はやってくるのです。
「Keep in touch.」の関係は、細く長くがちょうどいいのです。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。