スイスの金融大手クレディ・スイス・グループは惨たんたる経営状態にあるが、救済する同業UBSは再建の対価を十分に受け取る見通しだ。クレディ・スイスが24日発表した四半期決算の奇妙な内容は、この救済合併を巡るリスクとリターンを新たに示した。クレディ・スイスの1-3月期(第1四半期)決算は税引き前利益が約144億ドル(約1兆9300億円)に上り、一見すると四半期の過去最高益を達成したかのようだ。だが、特別項目を除く税引き前の損益は約15億ドルの赤字と、資産流出が始まった前四半期(11億ドルの赤字)から拡大した。こうした資金逃避が結局は同社を破綻に追い込んだ。数字に差が出た主な要因は、先月の救済合意の一環としてスイス金融当局が「AT1債」170億ドル相当を無価値化したことだ。弁済順位の低いAT1債を債務でなく資本と見なしたことで、会計上の「評価増し」をした格好になり、利益が押し上げられた。