ウクライナ軍に投降した後のヌジン受刑者(2022年9月19日)PHOTO: EMANUELE SATOLLI FOR THE WALL STREET JOURNALウクライナ軍に投降した後のヌジン受刑者(2022年9月19日)
PHOTO: EMANUELE SATOLLI FOR THE WALL STREET JOURNAL

【バルビンコベ(ウクライナ)】元治安部隊員で殺人罪で有罪判決を受けたエフゲニー・ヌジン受刑者(55)は、ロシアの厳重な刑務所に収容された極貧の囚人としてそれなりに幸せな人生を切り開いていた。

 20年にわたる服役中、受刑者や刑務官に取り入り、禁制の携帯電話を入手したり、刑務作業を免除してもらったり、獄中結婚した女性と3泊過ごさせてもらったりした。

「刑務所生活について知るべきことは全て知っている。それに関して私はプロだ」。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が昨秋に行ったインタビューでヌジン受刑者はそう語った。彼は2027年に釈放される予定だった。

 数年前に刑務所から短期間脱走したことがあるヌジン受刑者に昨年7月、再びチャンスが巡ってきた。ロシアがウクライナに戦争を仕掛けるために雇った民間軍事会社ワグネル・グループの創設者エフゲニー・プリゴジン氏(61)がヘリコプターで刑務所を訪れたのだ。同氏はヌジン受刑者をはじめとする700人の囚人に、ロシア各地の刑務所で行ったのと同じ売り込みをかけた。半年後の自由と引き換えにワグネルの指揮下で戦闘員として働き、給与を受け取るのはどうかと。