二重国籍を認めた事情~国際結婚家庭の増加と、兵役義務

 韓国では1990年代後半から2000年頃にかけて、中国や東南アジアからの結婚移民者が増えた。韓国では国際結婚家庭のことを「多文化家庭」と呼ぶ。この頃から韓国では多文化家庭が定着し、韓国ともう一つ、二つの国籍を持つ子どもが増加した。

 2011年に、国籍法が一部改正され、二重国籍が認められるようになった。その頃、既に少子化が問題視されていたため、若年層を中心とした人口減少を食い止めるための苦心の策だった。多文化家庭の子や、米国などで生まれて米韓両方の国籍を持っているなどの場合、「兵役任務を終えることを条件に二重国籍を保持できる」と法で認めるようになったのだ。韓国人男性は兵役に行くことが前提であるため、二重国籍を認められていても、韓国籍もある以上は兵役を避けては通れない、ということである。兵役義務がない女性の場合は、22歳までにその意思を表明することで二重国籍の保持が可能となる、とした。

 しかし、それだけでは問題は解決しなかった。韓国や米国のように一定の条件を満たせば成人以降の二重国籍を認める国ばかりではない。例えば日本は原則として成人の二重国籍の保持を認めていない。日本と韓国の国籍を持っている場合は、結局はどちらか一つの国籍を選択しなくてはならないということになる。

 実際、前述のように韓国籍を放棄して海外に行く者が増えているのだ。二重国籍の保持を容認しても、若者が韓国籍を捨てて海外に行ってしまうのでは、結局は無意味だったのではないかと思えてしまう。