インターネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムは1月30日に2012年通期決算を発表した。最終赤字ながら、時価総額は上場来最高水準。一見、不可解なその理由を解き明かす。

 わずか3カ月で212億ドル──。

 2012年第4四半期決算で、米アマゾン・ドット・コムは四半期の売上高として初めて200億ドル(約1.8兆円。1ドル=92円で換算、以下同)を突破した。これは、コンビニエンスストアのローソンが、全店で1年間に稼ぐ売上高に匹敵する金額だ。

 通期で見ても、12年の売上高は前年比27%増の610億ドル(約5.6兆円)に上り、この5年間で実に4倍に拡大している。

 この勢いを受け、ニューヨーク株式市場ではアマゾン株へ熱い視線が注がれる。時価総額は、直近12カ月で800億ドル(約7.4兆円)から1200億ドル(約11兆円)へと、50%も膨らんでいる。これはNTTドコモの約2倍、上場来最高水準を更新し続けている状況だ。

 ところが、純損益を見てみると、右肩上がりの売上高に対して、ゼロに近い横ばいが続いている。12年は3900万ドル(約36億円)のマイナスと、02年以来10年ぶりに最終赤字に転落しているほどだ(図1)。

 にもかかわらず、市場が動揺する様子はない。赤字なのに時価総額が最高水準というのはなぜだろうか。

 そもそもアマゾンは1994年の創業以来、書籍や音楽CD、家電などの通信販売から、音楽や映像の配信まで手がけてきた。安さや手軽さが支持を集め、利用者は1億8800万人を超える。