――人間のお客さまも釣れたわけですね(笑)。どうやってバランスのよさを実現しているのですか?

石塚 弊社スタッフの他、社外のアドバイザーがいまして、その方たちに試し釣りをしていただいて、最適なバランスを見つけ出しています。重りの位置を0.5mmずらすだけでもエギの動きが全く変わってくるので、繊細な作業です。

――「よく釣れる」という評判は口コミで広がっていったのですか?

石塚 そうですね。最近はSNSを使ったプロモーションにも力を入れています。10年以上前から始めていましたが、特にここ数年は重要度が増しているので、社内にSNS専門チームをつくりました。ユーチューブは動画を内製していて最低月1回更新、フェイスブックやインスタグラムは毎日更新するようにしています。

――ユーチューブは単なる商品紹介というより、社員の方が釣りを楽しんでいる動画が多いですね。

石塚 うちの社員が楽しそうに釣っているのを見ていただくことで、「私も釣りをしたいな」という感覚をお客さまに持っていただけたらいいなと思っています。動画撮影に限らず、社員で連れ立って釣りに行くことも多く、行けなかったスタッフにも釣れた魚を分け合っています。普段から和気あいあいと仕事も釣りも楽しんでいる会社ですね。

――動画では女性社員の方が釣っている姿も多く見られます。

石塚 実は弊社は女性社員が多く、社員19人中16人が女性です。SNSの動画作成や更新、商品パッケージのデザインなどは女性社員が担当しています。女性の皆さんに支えられている会社です。

――中兵庫信用金庫さんとお取引があるそうですね。

石塚 創業当初からのお付き合いです。今では他の金融機関とも取引がありますが、メインバンクは変わりません。フットワーク軽くご対応いただけるので、助かっています。「なかしんビジネスクラブ」にも加入していて、講演会や新入社員研修などを活用させていただいています。

イカやタコの釣り具「墨族(すみぞく)」が人気、社員が釣りを楽しむ動画でファンを増やす「墨族」ブランドをはじめとする各種釣り針。よく釣れると評判だ
●株式会社ハリミツ 事業内容/釣り針、釣り具の製造販売、従業員数19人、売上/高2億9809万円(2022年度)、所在地/兵庫県丹波市山南町梶631‐2、電話/0795‐76‐0123、URL/harimitsu.co.jp

――今後の抱負をお聞かせください。

石塚 釣りを通じて自然と親しみながら融合し、人生を楽しんでいただく。そのお手伝いを釣り具の提供によってさせていただきたいと思っています。

 そのためには、まず自分たちが釣りを楽しむこと。「わくわくする気持ちでみんなでずっと成長しともに楽しみを分かち合う」という経営理念のように、これからも進んでいきたいですね。

 近い将来の事業承継も視野に入れて、少しでもよい形で引き継ぎができればと考えています。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2023年7月号掲載、協力/中兵庫信用金庫