11×11~19×19を一瞬で暗算できる「おみやげ算」。刊行から半年で48万部を突破した『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』は、小学生の計算力強化はもちろん、「いつの間にか暗算ができなくなった」と危機感を覚えている大人たちの脳トレとしても役立つと好評です。読者からは「子どもが自発的に勉強している」「あっという間に暗算が得意になった」と賞賛の声がやみません。
今回は、本書が爆発的なヒットとなった要因などについて、担当編集・吉田瑞希さんに話を聞きました。(構成/根本隼)
「わかりやすさ」に徹底してこだわったタイトル
――タイトルはどのようにして決めましたか?
吉田瑞希(以下、吉田) もともと、著者の小杉拓也先生から「19×19まで完全に暗算できる本」というタイトルをご提案いただいていました。そこから、前回の記事(計算が苦手な人でも「19×19=361」が一瞬で暗算できる“すごい方法”)でお話したように、たとえ書店で棚差しになっても「誰が、どうなれるか」が背表紙でパッとわかるように、「小学生がたった1日で」という要素を入れました。
さらに、小学生にやさしい言葉を意識して、「完全に」を「かんぺきに」に変えて、タイトルが完成しました。
『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』というタイトルは長めではあるのですが、デザインでメリハリをつけることでわかりやすさ・とっつきやすさがうまく表現できたように思います。
――タイトル以外のこだわりを教えてください
吉田 本の中身については、気が散るような派手な色は使わず、集中しやすい青色を基調にしつつ、楽しさも演出したいのでフクロウのイラストを随所に入れました。
また、紙についても、鉛筆・シャープペンシル・ボールペンのどれを使っても書き心地がいいものを選びました。
シニア世代が「孫に教えるため」に買っている
――発売から半年で発行部数は48万部。細く売れ続けるロングセラーが多い学習参考書では異例のペースですが、大ヒットの要因は何だと思いますか?
(ダイヤモンド社書籍編集局第1編集部)
担当書籍は『「繊細さん」の幸せリスト』、『すごい左利き』、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』、『すごい言語化』など
吉田 要因は3つあると考えています。
1つは、メインターゲットの小学生だけでなく、お孫さんがいる「おじいちゃん・おばあちゃん世代」がたくさん買っているということです。これまで寄せられた読後の感想も、圧倒的にシニア世代が多いですね。
意外だったのは、シニア世代の方々は自分用の脳トレ本として本書を活用しているだけでなく、「おみやげ算」という画期的な計算法を「孫に教えたいから購入した」という声が後を絶たないということです。
お孫さんにただ買い与えるのではなく、自分で計算法を習得して、それをお孫さんに教えたいというニーズには、発売前には気づいていませんでした。
親子の場合も同じですが、おじいちゃん・おばあちゃんとお孫さんとのコミュニケーションのきっかけにもなっているんだと思います。
「自己肯定感」が高まる
吉田 2つめは、計算法を難しく感じさせないように、簡単な内容から少しずつ達成度を高めていく「スモールステップ」の構成になっていることです。
本を開いてすぐに難易度の高い内容が出てくると、子どものやる気を削いでしまいますし、最悪の場合は「算数は嫌い」と投げ出してしまいかねません。
なので、スモールステップで、子どもが「できた」という達成感を積み重ねていけるつくりになっていることが、支持されている要因だと思っています。
ちなみに、本の末尾には、「おみやげ算マスター認定書」があって、その内容も「100点をとってすごい」ではなく「最後までやり抜いたきみはすごい」という文章になっているので、最後まで自己肯定感が高まる仕組みになっています。
3つめは、書店の入り口など目立つ場所に売れ筋の本が平積みで並ぶ「話題書」コーナーに置いてもらえるように、書店営業部が売り込んでくれたことです。
この「話題書」コーナーでの展開によって、購買層が小学生からビジネスパーソン、そしてお孫さんを持つ世代にまで一気に広がりました。
これら3つの要因がうまくかみ合って、ここまでの大ヒットにつながったと感じています。
読者の皆さんからは、「もっといろいろな計算方法を知りたい」という声を数多くいただいたので、実はいま続編の制作にとりかかっています。ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。