今はナイキであってもスニーカーが簡単に売れる時期ではない。だからといって、その底力を見くびるべきではない。米スポーツ用品大手のナイキが29日発表した3-5月期(第4四半期)決算は、為替変動の影響を除いた売上高が前年同期比8%増となり、市場予想の5.4%増を上回った。ただ、純利益は28%減少した。一因は投入・物流コストの上昇や値下げ拡大で、粗利益率が圧迫された。人件費の増加にも直面し、営業利益率は前年同期の11.6%から9.5%に低下した。同社の株価はすでに年初来で3.1%下落していたが、決算発表を受けた引け後の時間外取引でさらに4%下落した。投資家がナイキに懸念を抱く理由はいくつかある。一つ目は、利益率と名声を守るために撤退した米百貨店メーシーズや米靴小売りチェーンDSWなどでの販売再開だ。これはナイキの直販戦略の健全性に対する懸念のみならず、ブランドイメージに対する疑問ももたらした。二つ目は、回復ペースが遅い中国だ。そして三つ目は、「HOKA(ホカ)」や「On(オン)」といった急成長中の専門ブランドにランニング事業の市場シェアを奪われているのではないかという懸念だ。ホカとオンの売上高はナイキに比べはるかに小さいながら、直近四半期にはそれぞれ前年同期比で40%、78%伸びている。