韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領 Photo:EPA=JIJI

尹大統領発言で浮き彫りになった
「国民の力」と「共に民主党」の国家観の違い

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は6月28日、保守系団体「韓国自由総連盟」の創立記念行事に参加し、「歪曲(わいきょく)された歴史意識、無責任な国家観を持つ反国家勢力は、核武装を高度化する北朝鮮共産集団に対する国連安保理制裁を解除してくれと要請し、(韓国にある)国連軍司令部を解体する(朝鮮戦争の)終戦宣言を唱え続けてきた」と述べ、文在寅(ムン・ジェイン)前政権を激しく非難した。

 また、尹錫悦大統領は、終戦宣言の推進は「でたらめな偽りの平和主義」と非難し、前政権による「北朝鮮ばかりを見て中国から無視された」外交を自分が正常化したと主張した。

 尹錫悦大統領が参加した行事の性格が保守系だけに、大統領は本音を率直に述べたものだろう。文在寅政権は北朝鮮の実態を見ない政治を行ってきたのは事実である。一人の学者であれば、反国家観を持った集団と非難してもいいだろう。しかし、大統領の発言となれば、そのインパクトは大きい。

 この尹錫悦大統領の発言に対し、最大野党「共に民主党(以下、民主党)」の李在明(イ・ジェミョン)代表は党の会議で、「国全体が極右に変化しているようだ」「極右発言、極右政権、極右大統領で、国が本当に心配だ」と発言した。

 これと平仄(ひょうそく)を合わせ、革新系メディアのハンギョレ新聞は7月1日、「『反国家勢力』と烙印を押す尹大統領…極右ユーチューバーとどこが違うのか」と題する社説を掲載、尹錫悦政権の攻勢に対し警戒を強めている。

 ハンギョレ新聞は、「終戦宣言は、朝鮮半島における恒久的な平和の定着のための政治宣言であり、米国や中国など周辺国の支持を得ていた」と主張、国民が選択した大統領と政権に「反国家勢力」という烙印(らくいん)を押すのは国民に対する冒涜(ぼうとく)だと批判した。

 さらにハンギョレ紙は、尹錫悦大統領が野党をターゲットに「国家アイデンティティーを否定する勢力が多すぎる」と述べたことを取り上げ、「国家アイデンティティーを否定する」と非難する姿勢が「自由民主主義なのか」と批判した。

 さらに尹錫悦大統領が昨年10月に「北朝鮮に従う主体思想派は進歩でも左派でもない。敵対的反国家勢力との協治(「協力して政治を行う」の意)は不可能だ」と発言したことも取り上げ、「現政権の極右的色彩は次第に濃くなりつつある」と主張した。