江ノ島電鉄の鎌倉高校前1号踏切江ノ島電鉄の鎌倉高校前1号踏切。平日の午前中にもかかわらず、100人ほど見受けられた。車道に出てしまっている人も多い(踏切から離れた歩道上からズーム機能を使って撮影) Photo by Wataya Miyatake

8月10日に中国人団体旅行が解禁されたこともあり、インバウンドの完全復活が期待されている。一方、観光地ではオーバーツーリズムに困惑する様子も。「SLAM DUNK踏切」で人気の江ノ電・鎌倉高校前駅で起きている問題を取材した。(乗り物ライター 宮武和多哉)

江ノ電の「SLAM DUNK踏切」に人だかり
悩ましいオーバーツーリズム問題

 夏のよく晴れた日、江ノ島電鉄(神奈川県・藤沢駅~鎌倉駅)に乗って驚いた。韓国や中華圏から来たと思われる訪日外国人旅行者(インバウンド)があまりにも多かったからだ。特にびっくりしたのが、鎌倉高校前駅。平日の朝11時台にもかかわらず大勢の乗客でごった返していた。同駅を降りた西側にある踏切は、ざっと100人くらいがたむろしスマホで写真を撮っている。車道のクルマやバイクと一触即発の危険も感じられたほどだ。

 観光庁によると、訪日外国人数は2019年に3188万人の過去最多を記録した。その後コロナ禍で“蒸発”したものの、22年には水際対策が緩和され383万人にまで回復。23年は中国人団体旅行が解禁されたこともあり、完全復活が期待されている。

 しかし、にぎわいを取り戻した観光地の中には、極端な混雑でさまざまな問題が生じる「オーバーツーリズム」も目立つ。地域住民と観光客のトラブルも発生しているという、鎌倉高校前駅の様子を現地で取材した。

 江ノ電の鎌倉高校前駅を降りた西側にある「鎌倉高校前1号踏切」は、1993年に放送開始したTVアニメ「SLAM DUNK」のオープニング映像に登場することで有名だ(なお、オープニング曲はロックバンドBAADの楽曲「君が好きだと叫びたい」)。

 SLAM DUNKは海外でも放送され、近年はインターネット配信の影響もあり、世界でファンを増やしている。この踏切はファンにとって「あこがれの地」だ。Google Mapにも「スラムダンク踏切」として掲載され、海外のSNSや紹介ページでは「Kamakura-koko-mae station」「SLAM DUNK」といったキーワード検索で、すぐに調べがつく大人気スポットとなっている。日本での放送終了から四半世紀たった今でも、「SLAM DUNKの聖地といえば鎌倉高校前の踏切」という認識は、各国のファン共通と言えるだろう。