石垣島のラーメン店が「日本人客お断り」という張り紙を掲げて、ネット上で大騒ぎになっている。外国人ならともかく、なぜマナーの良いはずの日本人客を…。そんな感想を持つ人も少なくないだろうが、観光地でも外食産業や介護産業でも、日本人客のマナーの悪さに悩む声は少なくないのが真実である。(ノンフィクションライター 窪田順生)
「日本人客お断り」には
どんな事情があったのか?
最初耳にした時、「日本人限定の間違いでしょ?」と戸惑った方も多いのではないか。
沖縄・石垣島のラーメン店「麺屋 八重山STYLE」がこの7月から「日本人の観光客のマナーが年々、悪化の為 海外のお客様のみの対応となってます」という張り紙を貼って、9月まで「日本人お断り営業」をしている件のことだ。
メディアの取材に応じた店主によると、カウンター8席のみの店なのに、注文しないで外で買ってきた商品を食べる客が多いことや、それらの行動を注意したところ逆ギレする客も多く、スタッフが気を病んで辞めてしまい、1人で切り盛りしなくてはいけなくなったから、だという。
要するに、日本人観光客のマナーの悪さに耐えられなくなったというのだ。
これを受けてSNSでは、店側の接客態度も悪かったぞ、とディスる者も現れるなど泥仕合の様相を呈してきているが、個人的には店主の気持ちはわからんでもない。石垣島で客商売をする人が抱く感情としては、極めて正常というか、ナチュラルな反応だからだ。
なんてことを口走ると、「マナーの悪さでいえば、外国人観光客の方が問題だ!」とか「ほんの一握りのマナーの悪い輩の振る舞いと日本人全員を一緒にするな!」と不快になってしまう方も少なくないだろう。中には、堀ちえみさんのブログに「嘘つき タヒね」と執拗に送り続けた主婦の方のように、こういう反日ヤローは抹殺すべきと意気込む方もいるかもしれない。
ただ、ちょっと言い訳をさせていただくと、筆者が「わかる」と申し上げたのは、そういうイデオロギッシュな観点からではなく、ごく単純に「数」で見れば当然のことだと言いたいのだ。
例えば、直近(2019年4月)の石垣市の入域観光客統計概況を見ると、12万906人。人口約4万9000人の島に、2.5倍弱ものもの観光客が押し寄せている。
と聞くと、「そりゃあ、日本中どこもかしこも外国人観光客だらけだからな」と思うかもしれないが、その認識は石垣には当てはまらない。先の統計によれば観光客の中で外国客は1万7905人。残りの85%の10万3001人は、すべて日本人なのだ。
猫も杓子もインバウンドなのであまりピンとこないかもしれないが、実は近年、石垣は日本人観光客が大挙して訪れ、その数はなんと年間115万人にも及んでいる。