祖父の代から続く製造業の会社の後継者として育ち、会社の歴史と価値を学んで、3代目社長になったAさんは順調に会社経営をしていました。しかし、ある大きなチャンスをつかんだことをきっかけに、転落の憂き目に遭いました。特集『富裕層の「お金の大失敗」』の#7では、ある3代目社長の失敗をご紹介します。(税理士・YouTuber 菅原由一)
変化に適応し、信頼もあった製造業の3代目社長
Aさんは、祖父の代から続く製造業の後継者でした。
幼少期から自宅と隣接している会社で過ごし、父親の仕事ぶりや機械の動き、職人たちの技術などに触れてきました。父親からは仕事の楽しさ、取引先や従業員たちへの感謝の気持ちを常に聞かされ、実直な3代目として育ちました。
そして、大学では工学を専攻し、会社を発展させるための知識とスキルを身に付けました。大学卒業後、彼は父親の会社で実務経験を積みながら、地道な努力で技術を習得し、会社を引っ張っていく存在にまで成長しました。
約20年間、父の下で一通りの仕事を経験し、経営にも携わるようになった42歳の時、父親の後継者として社長に就任。父親から経営のかじ取りを任されたAさんは新たなビジョンを描き、今までの会社の強みを尊重しつつ、新しい技術と市場の変化に適応することを決意しました。
就任後も、持ち前のリーダーシップで社員を引っ張り、新しいアイデアをどんどん取り入れ会社を成長させることができました。
しかし、成功の光に過度に照らされることが大きなリスクを見落とす一因となると、彼は後に知ることとなったのです。