「ワシントンDCの全ての人を知る男(“the man who knows everyone in Washington”)」の異名を持つジョン・ギジー氏は、米メディア「ニュースマックス(NEWSMAX)」のチーフ政治コラムニスト兼ホワイトハウス特派員だ。ギジー氏は、過去には米保守派において権威ある「ウィリアム・A・ラッシャー賞」を受賞。2002年には年間最優秀ジャーナリスト(保守政治行動会議)に選出されていて、特に、大統領選挙やワシントン政界において卓越した知見を有している。そんなギジー氏に、来年、24年に行われる米大統領選挙について、最新の動向を聞いた。(聞き手・執筆/イトモス研究所所長 小倉健一)
アメリカが本当に台湾を
最後まで守るかは分からない
かつて、こんなことがありました。(リーマンショックの経済危機下にあった頃)国際通貨基金(IMF)の理事になる前のクリスティーヌ・ラガルド氏は、フランスの財務大臣をしていました。そんな彼女に対して、私は「アメリカ政府が閉鎖されるといううわさが流れているが、もしそんなことが起きたら、世界の他の都市にも混乱が起きますか」と尋ねました。すると、彼女は「そんなの当たり前じゃない」とちゅうちょなく答えました。「アメリカの首都の機能が停止すれば、世界中にも影響が及びます」と。
今日、私たちの世界は相互につながっているということです。そして、このやりとりから10年以上たちましたが、彼女のその言葉は、現在の世界の状況を正確に言い表しているといえます。
来年のアメリカ大統領選挙の結果は、東アジアにもダイレクトに影響を与えるでしょう。
例えば、アメリカが中国から台湾を守るという約束を最後まで維持するのか、輸出の約16%をアメリカへ向けて行っている国(中国のこと)に敬意を払うのかという問題です。さらに、私たちが、アメリカ大統領と岸田文雄首相、(韓国の)尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3人で食事をすることを見続けることができるかどうかは、次の大統領にかかってくるわけです。
次の大統領がどこまで東アジア地域に関心を寄せるのかはまだ分かりません。とても長い大統領選挙期間で、外交政策が議論になるのは約20分しかないという研究があります。しかし、アメリカの大統領が誰になるかは、東京、ソウル、台北、そして北京では長々と議論されることになると思います。
バイデン大統領は台湾を友人と考え、中国が台湾へ侵略した場合は台湾への支援を考えていると、歴代のどの大統領よりも強く話しています。またトランプ氏が実施した中国への関税は、いまだに続いています。つまり、東アジアについては、バイデンとトランプの両氏は同じ方向に進んでいるという見方もできます。
しかし、アフガニスタンからの米軍の撤退やウクライナの状況を踏まえつつ、アメリカが中国から得ているものを考えたときには、本当に台湾を最後まで守るかどうか分かりません。