写真:台湾周辺の世界地図Photo:PIXTA

「中国にとって、台湾占領は『豆腐を食べるように簡単』なのだ」――。台湾内では緻密な分析に基づいた専門家によるそんな激論が交わされている。一方、日本では沖縄米軍基地の移設に対する反対活動に関して「座り込みの定義」を巡る表層的な議論が巻き起こっている状況だ。台湾海峡の情勢が緊迫化する中、沖縄に偏った基地負担問題を含めた本質的な安全保障の議論が待ったなしの日本。しかし、その危機感のなさは深刻だ。(イトモス研究所所長 小倉健一)

ロシアによるウクライナ侵攻で
中国発の「台湾有事」に懸念が募る

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナへ軍事侵攻した。そのことが中国共産党や習近平国家主席によからぬ影響を与えるのではないかという懸念が広がっている。領土紛争や外交問題を、話し合いでなく武力によって解決してもいいのだという考えを持つのではないか、という不安だ。

 ロシアのウクライナ侵攻については、原因をつくったのがウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領なのではないかと指摘する識者も一部いる。外交面で過度にロシアを刺激したというのがその論拠だ。しかし、いずれにしろ圧倒的な軍事力や核武装を背景に軍事侵攻をしたのはロシアである。

 同じように、何らかの理由をつけて台湾への武力侵略を中国がするのではないかという懸念を西側諸国の情報機関は共有している。台湾の親中派・国民党が政権を担っていた時代に国家安全会議秘書長を務め、両岸問題や外交問題を担当した蘇起氏は、「中国の軍事的プレゼンスが高まり、5年以内に米国は台湾を守れなくなる」と指摘している。

 今回は、緊迫する台湾情勢と、それに巻き込まれつつある日本の状況について述べたい。