「やられた!」。書店でその本を見た時、教育実践家の藤原和博さんは思わず叫んだという。『冒険の書』。ミステリアスな表紙に、「好きなことだけしてちゃダメですか?」という刺激的な帯のコピー。えっ? そんなこと許されるの? 『冒険の書――AI時代のアンラーニング』(日経BP)の著者である“連続起業家”の孫泰蔵さんに、『学校がウソくさい――新時代の教育改造ルール』(朝日新書)の著者である藤原さんがその真意を訊く対談が実現。旧知のふたりが「学び」について語り合った。
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私たちは何を学ぶべきか
藤原和博(以下藤原):孫さんの『冒険の書』は、ひじょうに不思議な本です。タイトルからは何の冒険なのかは一切わからない。引き込まれるように読み始めると、なんと、「人間が学ぶ」ことを根源から問い直す哲学への旅だったわけです。しかも、過去の哲人たちとの対話という物語形式にもなっている。繰り返されるのは「学ぶって、何なのか?」という問いですよね。哲学ファンタジーともいえる本書を書くきっかけは何だったんでしょう?
孫泰蔵(以下孫):ひと言で言えばAI、つまり人工知能の進化です。それもここ5~6年で一気に進歩して、「え? 魔法?」としか思えないようなものが生まれているんですね。「どこへでも物資を運ぶAIドローン」や、プラスティックのゴミから生まれた「環境に害のないグリーン・プラスティック」など、世界の若い起業家たちがどんどん発明している。昨年末から話題の生成AI「ChatGPT」もその一つですよね。