東大・早稲田…ChatGPTで学生が課題をこなす時代、各大学の対応は?【全33大学の方針】画像生成AI「Midjourney」で筆者が作成した画像

幼少時からIT技術に囲まれて育った世代が「デジタルネイティブ」と呼ばれるように、これからの子どもたちは「AIネイティブ」として、これまで以上に変化の激しい時代を生きていくことになる。そのようなAIネイティブに対する教育のあり方は、どのようなものになっていくのだろうか?日本全国の大学がChatGPTなどの生成系AIとどのように付き合っていこうと考えているのか、各大学の方針をまとめてみた。(テクノロジーライター 大谷和利)

パーソナルコンピュータが「知的自転車」なら
生成系AIは「知的電動アシスト自転車」?

 故スティーブ・ジョブズは、パーソナルコンピュータを「知的自転車」と評した。自転車は、人間にとって最もエネルギー効率の高い交通手段であり、歩行並みのエネルギー消費で、はるかに速く、遠くまで移動できる。ジョブズはパーソナルコンピュータを、個人の知的能力を何倍にも増幅してくれる、脳にとっての自転車にたとえたのである。

 一時はMacintoshの製品名まで“Bicycle”にするつもりでいた彼は、アップルが立ち上げた高等教育におけるテクノロジー利用のための大学コンソーシアムを“Wheels for the Mind”と名付けた。そして、そのロゴに、Macとともに疾走する自転車がモチーフのデザインを採用したのだった。

Macとともに疾走する自転車がモチーフの”Wheels for the Mind”のロゴMacとともに疾走する自転車がモチーフの“Wheels for the Mind”のロゴ Image:Apple

 一方でビル・ゲイツは、「(ChatGPTの登場は)初めてコンピュータを見たときの衝撃に匹敵する」と語っている。そこまでのインパクトをもたらす生成系AIを、ジョブズ流に表現したなら、さしずめ「知的電動アシスト自転車」といったところか。生成系AIは、使い方次第で人間の“脳”力を、従来のコンピュータアプリ以上に増幅してくれる可能性を秘めているからだ。

「使い方次第で」というのは、皆さんもご存じの通り、AIへの依存によって逆に自ら考える力が衰えたり、悪意を持つユーザーの手で詐欺メールや詐欺サイトの構築に利用されたりと、負の用途に利用される危険も内包しているためである。たとえば、筆者の地元では、親が子どもを乗せた買い物用の電動アシスト自転車による信号無視を少なからず目にする。乗り手自身の体力だけでは横断を諦めるような赤信号でもモーターのアシストで交差点に突っ込み、子どもの命まで危険にさらす行為は、ある意味でテクノロジーがもたらす万能感に酔いしれる人間の姿を象徴するかのようだ。「知的電動アシスト自転車」たる生成系AIにも、そうしたダークサイドは付いて回る。