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大谷翔平。この世紀の大打者に今更説明は不要だろう。投打における無双の活躍は、野球ファンならずとも日本中に広く知られている。20年前の野球ファンに「メジャーリーグで、ピッチャーとバッターの両方で活躍する日本人選手が出てくる」と言っても、間違いなく信じてはもらえないだろう。それほどまでに大谷翔平が現在進行形で残し続けている功績というのは、長い野球の歴史において傑出している。知名度も野球選手の中で群を抜いており、その成績はもちろん、日ごろの態度や交友関係、果ては通訳の素性までが広く話題にされる。
しかし大谷選手について知っている人でも、本書は新鮮に感じるはずだ。著者でありスポーツライターでもあるジェイ・パリス氏はエンゼルスが地元球団。ページを繰れば同球団に深い愛情を持っていることが分かるだろう。それ故に、エンゼルスファンの貴重な視点から大谷選手の活躍について語っている。日本のドキュメンタリーでは決して伝わらない、エンゼルスファンの熱量、そして歓喜、落胆などが実に活き活きと描かれている。取材する上でエンゼルスのチームメイトや相手チームの選手の談話、監督のコメントなどをたくさん取り入れているのも特徴だろう。我々とは異なる視点から大谷選手に注がれる眼差しは、きっと読者にも新しく感じられるはずだ。(流 隼人)