新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大成建設、鹿島などの「ゼネコン」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
大成建設がゼネコン4社で
「独り負け」の減収・赤字転落
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゼネコン業界4社。対象期間は2023年2~6月期の四半期(4社いずれも23年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・大成建設
増収率:マイナス0.2%(四半期の売上高3289億円)
・鹿島
増収率:16.8%(四半期の売上高5835億円)
・大林組
増収率:18.8%(四半期の売上高4874億円)
・清水建設
増収率:14.7%(四半期の売上高4414億円)
ゼネコン業界の大手4社では、鹿島・大林組・清水建設が2桁増収を果たした。その一方で、大成建設だけが減収となった。
さらに、大成建設は23年4~6月期の営業損益が80億円の赤字(前年同期は61億円の黒字)、純利益が23億円の赤字(前年同期は64億円の黒字)と利益面でも大苦戦した。
今回分析対象としたゼネコン4社には、大成建設以外にも減益となった企業が含まれている。だが、赤字だったのは大成建設のみと、まさしく「独り負け」の様相を呈している。
前四半期の記事で触れた通り、大成建設では今春に「施工不良」問題が発覚。札幌市内に建設中のビルで鉄骨に精度不良があったにもかかわらず、現場担当者が虚偽の数値を報告していたという。その影響で23年3月期に「是正工事実施に伴う損失」として約240億円を計上し、通期決算で大幅減益に陥っていた。
ただし、大成建設が23年4~6月期に赤字転落した主な理由はこの「施工不良」問題とは異なる。では「一難去ってまた一難」とばかりに、大成建設に重くのしかかった減益要因とは何か――。
次ページでは、各社の増収率の推移と併せて、大成建設の現状について詳しく解説する。