「大阪」沈む経済 試練の財界#13Photo:123RF

ゼネコン大手の竹中工務店と大林組が東阪で繰り広げる目玉案件の激しい争奪戦は“竹林戦争”といわれる。両社の首脳は大阪財界で要職を歴任してきたが、発注側である関西私鉄など有力顧客は、ゼネコンに決して甘くはない。20回超にわたり公開予定の特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#13では、東京地盤のゼネコンも巻き込んだ受注競争の歴史をひもとき、大阪・関西万博後も続く死闘を展望する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

お得意さまの“不義理”は90年代から増加
竹中・大林のすみ分けを破壊したのは!?

 東京オリンピック・パラリンピックに合わせて2010年代に東京で進んだ都市部の開発が、1周遅れて大阪でも進んでいる。

 大阪を代表する繁華街である梅田は、百貨店の建て替えに伴い、超高層のオフィスビルとの複合開発が進んだ。JR大阪駅北西の旧貨物駅だった愛称「うめきた」エリアでは、2期目の工事が進む。

 東京・大手町のように金融機関が集まる淀屋橋も、中心部の古いビルを建て替え、御堂筋を挟んでツインタワー化する工事が始まった。

 そんな大規模プロジェクトの受注を激しく競い合ってきたのが、長らく大阪を地盤としてきたスーパーゼネコンの大林組と竹中工務店である。

 かつては、関西の特定の企業グループは大林と竹中のいずれかをパートナーとし、工事を発注する際には、一定程度のすみ分けがなされていた。ところが大阪だけでなく日本経済が低迷し始めた1990年代以降は、発注者側がコストを重視してゼネコン各社をドライに競わせるようになった。

 ゼネコン側にとっては“不義理”以外の何物でもないが、請負業という弱い立場でもあり、価格でも何でも無理をして営業をかけるしかない。

 さらにゼネコンは自身の業績が厳しくとも、地域の目玉となる“ランドマーク案件”は時に赤字でも奪取しようとする習性がある。そんなゼネコンの心理を逆手に受注を激しく競わせ、案件を「買いたたく」ある関西の超名門企業もある。

 もちろん、大阪財界でも重責を担ってきた大林、竹中双方は、メンツに懸けて地元の大規模案件を獲得してきたが、かつての縄張りを互いに越境する戦いとなった。同じ大阪財界のよしみも通じない、仁義なき“竹林(ちくりん)戦争”の歴史を、次ページからひもといていく。