ダイヤモンド決算報#ゼネコン(大成建設の旗)Photo:JIJI

新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大成建設、鹿島などの「ゼネコン」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

鹿島・大林組・清水建設が増益も
大成建設は「2桁減益」

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゼネコン業界4社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(4社いずれも23年1~3月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・大成建設
 増収率:0.2%(四半期の売上高5381億円)
・鹿島
 増収率:6.9%(四半期の売上高6385億円)
・大林組
 増収率:マイナス0.7%(四半期の売上高5428億円)
・清水建設
 増収率:28.0%(四半期の売上高6138億円)

 ゼネコン業界の大手4社では、清水建設が約3割の大幅増収を果たした。鹿島と大成建設も前年同期実績を上回ったが、大林組はわずかにマイナスという結果だった。

 一方、23年3月期の通期累計売上高においては、この4社はいずれも増収で着地した。上記の通り第4四半期(23年1~3月期)は減収だった大林組も、第3四半期まではプラスで推移しており、それまでの“貯金”によってカバーした形だ。

 ただし通期累計の利益面に目を向けると、ゼネコン4社の中で明暗がくっきりと浮かび上がる。鹿島・大林組・清水建設の3社が営業利益・純利益ともに前期実績を上回ったのに対し、大成建設だけが両指標ともに大幅減益(営業利益43.0%減、純利益34.0%減)に陥っていたのだ。

 その背景には、大成建設で今春発覚した「施工不良」問題がある。同社が札幌市で建設中の大型複合ビルでは、鉄骨に精度不良があったにもかかわらず、現場担当者が工事管理者に虚偽の数値を報告していたという。

(※詳細は『大成建設がスーパーゼネコン最下位転落!?大型工事虚報告が招く「最悪シナリオ」』参照)

 大成建設は問題発覚に伴って工事の“やり直し”を強いられ、「是正工事実施に伴う損失」として23年3月期に約240億円を計上。このことが大幅減益につながった。また、同社では24年3月期を最終年度とする中期経営計画が進行中だが、現状では目標を達成できない見通しだという。

 施工不良問題に揺れる大成建設の業績はどうなっているのか――。次ページでは、各社の増収率の推移と併せて、大成建設の現状について詳しく解説する。