関電のヘルメットを装着し、ツアー開始!
取材当日は快晴。まずは観光客に混じり欅平までトロッコ電車に揺られます。
通常欅平で降りる時は来た道を戻って周辺を見て回りますが、今回の目的地はその奥。ボディチェックの後に欅平下部にある竪坑エレベーターへ。200mを一気に上昇します。
既に一般の観光客は入れないエリア。ここにある展望台では、白馬鑓ヶ岳など後立山連峰を見られるのですが、注目は向かいに見える標高1534mの奥鐘山。1938年の黒部川第三発電所の建築にあたって、志合谷にあった4階建ての作業員宿舎がホウ雪崩*によって600mも吹き飛ばされ、80人以上の作業員が亡くなったという痛ましい事故があった場所です。
*ホウ雪崩:水分量が少ない雪がなだれる際、急激に圧縮されることで爆発的なエネルギーを生み出す雪崩
ここで、蓄電池機関車に乗り換え、地中を仙人ダムに向けて進みます。
しばらくするとむわっとする熱気と、硫黄臭が…。ここが高熱隧道です。
掘削時に岩盤温度が160度を超え、ダイナマイトが自然爆発する事故があった場所です。当時は岩盤を掘る人に後ろから水をかける役割の人がつき、必死に掘り進んだという場所。あまりに過酷だったため、作業時間は1回20分までと決められていたそうです。現在でも火山ガスが出ているエリア、当時はさらに危険な場所だったのでしょう。
ひとしきり景色を眺めたあとは待望の黒部川第四発電所に進みます。私が見たことがあるのは登山雑誌などで下ノ廊下のルート紹介で出てくる下のような写真だけ。
いよいよ内部に入っていきます。
これまで岩がむき出しのトンネルを進んできましたが、いきなり建造物が割りこんでくる感じが、人と自然がせめぎあっているように思えます。この黒四発電所の標高は869m。しかし地図を見てみると、発電所があるあたりは高度1300m。つまりこの発電所は山の地下数百メートルを丸ごとくりぬいて造られた巨大な要塞のような場所なのです。人生で一番大きな秘密基地に入った気分…。
発電所の見学を終えると、いよいよここに流れる水の源、黒部ダムへ向かいます。このルートのハイライト、インクライン(資材運搬用のケーブルカー)で標高を一気に稼ぎます。
漆黒のトンネルの中で、目指す光も下部からはただの点に見えます。我々は運搬車の中で窓越しに景色を眺め、職員の方の説明を伺っていたのですが、これがもしホラーゲームだったら、ケーブルカーがいきなり止まり、席を立った瞬間にボス戦が始まることでしょう。