原油価格(ブレント)は、2月前半に1バレル当たり120ドル近くにまで上昇した。米国のガソリン価格も、国際指標とされるブレント原油の値動きに連動し、消費者心理に悪影響を及ぼすとされる1ガロン当たり4ドル前後に達した。また、世界景気の回復基調や中東・北アフリカの地政学問題を考えると、原油価格はさらに上昇するようにも思えた。
しかしその後、原油価格は上値が重くなり、3月初めにかけて下落傾向が続く。米国を中心に株価は底堅く、世界景気の減速観測が強まっているわけではない。イタリアの政治の安定性や米国の連邦政府の歳出削減などの不透明要因が出てきているものの、ただちに世界景気を失速させるようなリスクとしては捉えられていない。
原油や金など商品市況全般に上値が抑えられた背景として、まず、米国の追加金融緩和観測や通貨安競争への懸念が後退したことが挙げられる。2月中旬に、G20会合やそれに先立つG7で、各国の金融緩和は国内の物価安定などに向けられるものであり、通貨の競争的な切り下げを回避する方針が確認された。また、FOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録や地区連銀総裁の発言により、米国が量的金融緩和から出口に向かうとの観測が一時的に強まった。
これまで金融緩和策が強化されてきた流れに歯止めがかかると、商品市況が抑制されるとの思惑が高まりやすくなる。
一方、原油については、景気回復が続いても、需給がタイト化しそうにない。先進国を見ると、相対的に景気が底堅い米国でも石油需要は前年並みにとどまり、経済成長率がマイナスとなった欧州では前年割れが続いている。2013年は新興国を中心に世界需要は前年比約1%(日量で90万バレル前後)増加すると見込まれるものの、供給力も増加している。