住宅を買うときに、「売るとき」まで想定して、長期ビジョンで計画を立てる人は少ない。しかし、実はそこが人生を変える分岐点になるのだと主張するのは、不動産市場分析を行うアトラクターズ・ラボ代表の沖有人氏。「自宅は、住みながら運用できる手間いらずの金融商品」という沖氏に、自宅を買って儲けを出す秘訣を聞いた。
「儲かる物件」を選ぶための条件を探る
代表取締役
沖 有人(おき・ゆうじん) 慶應義塾大学経済学部卒。監査法人トーマツのコンサルティング会社、不動産マーケティング会社を経て、1998年、アトラクターズ・ラボ株式会社を設立、代表取締役に。住宅分野において、マーケティング・統計・ITの3分野を統合し、不動産データを収集・分析、調査・コンサルティングを手がける。分譲マンションの購入予定者向け会員制サイト「住まいサーフィン」(https://www.sumai-surfin.com/) サイト上で新築物件の儲かる確率を公表している
『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)という刺激的なタイトルの著書が話題になっている沖有人氏。
なぜ「10年」が目安になるのかというと、一つはライフステージの変化。例えば小学校と中学校の在校期間を合わせると9年。あるいは中学校と高校、大学までで10年。子育てしながら進学時期を機に住み替えを計画する人が多いことを考えれば、なるほど「10年」は住宅選びの適度なスパンだといえる。
「それだけでなく、住宅取得控除の期間が10年で切れる、10年固定ローンは長期固定ローンより金利が安い、フラット35Sの金利優遇も最短10年、何より買いたい人が10年以内の築浅物件を望んでいるなど、『10年買い替え』には有利な条件が揃っています」という。
もちろん、誰でも簡単に、計画通りの買い替えができるとは限らない。売ろうとしても思う価格で売れずに、否応なく住み続けなければならないケースも少なくない。
「だからこそ、儲かる物件を選んで買うべきです。そうした物件を選ぶには、利益を出した物件と、そうでない物件の違いを、しっかり検証していくことが重要になります」(沖氏)
具体的に首都圏11の駅を選び、実際に売買して「儲かった」マンションと、「損をした」マンションの差を見せてもらった(図1-1)。
例えば東京メトロ有楽町線「豊洲」の二つのマンションは、竣工年が1年しか違わないのに、中古単価(1平方メートル当たり)が、43万円と70万円で、27万円も差がついている。
中古単価には、最初の購入価格の差が響いているかもしれない。そこで、それぞれの中古騰落率(中古売却価格÷新築購入価格)で見ると、マイナス26.6%とプラス21.7%という、やはり極端な開きが出ている。
いったい、なぜだろうか。