AI時代、最重要の教養の一つと言われる「哲学」。そんな哲学の教養が、一気に身につく本が上陸した。18か国で刊行予定の世界的ベストセラー『父が息子に語る壮大かつ圧倒的に面白い哲学の書』(スコット・ハーショヴィッツ著、御立英史訳)だ。イェール大学とオックスフォード大学で博士号を取得した哲学教授の著者が、小さな子どもたちと対話しながら「自分とは何か?」から「宇宙の終わり」まで、難題ばかりなのにするする読める言葉で一気に語るという前代未聞のアプローチで、東京大学准教授の斎藤幸平氏が「あらゆる人のための哲学入門」と評する。本稿では、同書より特別にその一節を公開したい。
「考える人」を育てる方法とは?
私と妻のジュリーが哲学者を育てようとしてきたことは明らかだ。しかも二人。
あなたも哲学者を育てるべきだろうか──という問いは適切ではない。親が育てるまでもなく、すべての子どもは哲学者だからだ。
問題は、親がその哲学者をサポートするか、無視するか、押しつぶすかだ。
ここまで読んでくれたあなたなら同意してくれると思うが、親は子どもの中にある哲学する心をサポートすべきだ。
なぜか?
この本の最初で、レックスが哲学について教えてくれたことを思い出してほしい。
そう、哲学は「考える技術」なのだ。
それは、親であればわが子に習得させたい技術だ。
プロの哲学者を育てるためではない。
目標は、明晰にして思慮深く考える人間を育てることだ。自分の頭で考える人間を育てることだ。他者が何を考えているかに心を配り、その人とともに考えようとする人を育てることだ。
つまり、「考える人」を育てることだ。
「対等な相手」として会話をする
どうすれば、考える人を育てることができるのだろう。
いちばん簡単な方法は子どもと話をすることだ。子どもに質問し、返ってきた答えについて質問する。質問は複雑である必要はないし、哲学など知らなくても大丈夫だ。実際、いくつか定型の質問を用意しておけば、ほとんどの場面で対応できる。
・きみはどう思うの?
・なぜそう思うの?
・もしきみが間違っているとしたら、それはどうしてだと思う?
・それはどういう意味?
・○○って何?
目的は、子どもに考えを話させ、反対方向からも考えさせることだ。だから、ほとんど子どもに話をさせるようにしよう。子どもが言葉に詰まったら、そのときはためらわず助け船を出そう。
何よりも大事なことは、対等な相手として会話をすることだ。
賛成できない意見であっても、ばかげた考えだと思っても、子どもの言うことを真剣に受けとめることだ。こう考えなさいと言いたくなる気持ちを抑えて、子どもと一緒になって考えを積み上げていくことだ。
(本稿は、スコット・ハーショヴィッツ著『父が息子に語る壮大かつ圧倒的に面白い哲学の書』からの抜粋です)