1111億円。その高額落札に不動産関係者は息をのんだ。2月末、ソニーが東京都品川区に持つ自社ビルを三井不動産系のREIT(不動産投資信託)最大手、日本ビルファンド投資法人などに売却したと発表した。
日本ビルファンド関係者は「久しぶりの大型案件を落札できてよかった」と声を弾ませた。これに対し、冒頭の不動産関係者は「5年後にはあのビルからソニーが出ることになっている。もう少し慎重な金額でよかったのではないか」と暗に高値づかみを示唆した。
一方で、そう指摘される水準まで踏み込まないと買えない訳もあった。
あふれるマネーが
不動産市場に集中
「これはバブルの始まりなのか、それとも下がり過ぎからようやく適正水準に戻っただけなのか」――。
不動産関係者の間でもまだその判断は定まっていないが、不動産市場が久々の活況に沸いていることだけは間違いない。昨年9月まで1000を割っていた東証REIT指数は、わずか半年足らずで1400まで跳ね上がった。
図1をご覧いただきたい。現在の不動産市場に参入している主なプレーヤーをまとめたものだ。
「リーマンショック後しばらくは、どのファンドマネジメント会社もローンを調達しづらく、投資家から資金を集めることもできなかった」(荒木治彦・三菱地所都市開発業務部副長)というが、今や状況は様変わりした。
数年前までは新興デベロッパーや外資ファンドが国内不動産市場における最大の買い手だったが、今は国内REITが取って代わった。
こうしたREITへの資金の出し手となるのが、国内の個人投資家や海外投資家なのだが、実は一番REITに殺到しているのは、地方銀行や信用金庫だ。