コロナ禍で増えた
自分と向き合う時間
もう一つの大きな理由として挙げられるのが、新型コロナウイルス感染症です。このパンデミックが私たち一人ひとりの生活や価値観を大きく変えました。コロナにより健康や命と向き合う時間が増えるなか、多くの人にとって自分自身の生きる意味や働くことの意味について改めて考えるきっかけになりました。
人と直接会うことが難しくなり、リアルなつながりの大切さを感じた人や、改めて家族や仲間の存在の価値に気づいた人もいるでしょう。
これまで残業や仕事の会食で、平日に家族と食卓を囲むことがまれだったビジネスパーソンが、毎日家で食事をすることで、家族との新しい関係ができたという経験をした人も数多くいます。
テレワークの普及でこれまで毎日出社するのが当たり前だとされていた常識が変わり、毎朝ペットと散歩することも可能になりました。コロナ禍でのステイホームという新しい生活は、「自分にとっての幸せとは何か」を改めて考えるきっかけとなったのです。
特に、2020年4月に全国に広がった緊急事態宣言の際は、ステイホームでの自粛が国からも求められました。多くの人が身近な買い物以外は外出を控え、リアルでは誰とも会うことも話をすることもないという状況が続きました。
感染の恐怖という強いストレスを抱えながら、仕事はテレワークになってPC画面を一日中注視、プライベートでは友人たちとお酒を飲みながらの楽しい時間も禁じられた環境下で、多くの人の心の健康がむしばまれました。
コロナ禍を経て人々の健康に対する意識は非常に高いものとなりました。「カラダの健康」だけではなく、メンタルケアの重要性、すなわち「ココロの健康」への問題意識も高まりました。
「ワークライフバランス」という言葉がありますが、これは、仕事とプライベートを調和させるために常に両者がバランスを取っていられるよう調整するという概念で、これまでは「仕事とプライベートのバランスを維持する」という意味合いで使われてきました。
例えば「仕事で活躍するために、趣味の時間を削る」「子どもの面倒を見るために仕事を減らす」というように、働くこととそれ以外をトレードオフの関係として捉える考え方です。しかしコロナ禍では、仕事とプライベートを線引きせず、完全に一体化させながら人生の充実を図る「ワークライフインテグレーション」という新しい考え方が注目されています。
仕事とプライベートが相乗的に作用し合ったものが人生であると捉え、例えば、家庭が充実すると、仕事のモチベーションが高まるとする考え方です。