Photo: Carol Yepes / Getty Images
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コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻を契機にして悪化する株式市場。その影響はスタートアップ投資にも“冬の時代”をもたらす可能性がある。その際のイグジット戦略としてのM&Aをどう考えるべきか。M&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を運営するスタートアップ・M&Aクラウ​​ド代表取締役CEOである及川厚博氏がクラウド会計サービスを展開するfreeeのM&A事例をもとに解説する。

クラウド会計のfreeeが5月9日、税務領域に特化したクラウド「A-SaaS」を展開するMikatusのグループインを発表しました。ライバルのマネーフォワードとともに、熾烈なM&A戦争を繰り広げてきたfreee。昨今、多くのスタートアップがイグジットやファイナンス手段の見直しを余儀なくされる中、freeeのようなストロングバイヤーの動向には一層の注目が集まっています。

そこで今回は、Mikatus案件を含むfreeeのM&A戦略にフォーカス。特に、強力なライバルと戦う買い手ならではの思考回路や施策について見ていきたいと思います。

公開情報を参考にしつつ、一部想像も交えて書いていきます。あくまで個人の考察です。「freeeのようなM&A巧者になるには?」「freeeのような強い事業会社と組むには?」──そんな思いを持つ経営者の皆さまに、何かのヒントを提供できれば幸いです。

■案件概要

買い手:freee

売り手:Mikatus

発表日:2022/5/9

スキーム:現金対価簡易株式交換+第三者割当増資の引受

バリュエーション:25.2億円

シェア争い激化×株式市況急落──今、目が離せないSaaSのM&A市場

本題に入る前にもう一度、今、マクロで起きていることを整理してみたいと思います。