「世界史とは、戦争の歴史です」。そう語るのは、現役東大生集団の東大カルペ・ディエムだ。全国複数の高校で学習指導を行う彼らが、「戦争」を切り口に、世界史の流れをわかりやすく解説したのが『東大生が教える 戦争超全史』。世界史、現代情勢を理解するうえで超重要な戦争・反乱・革命・紛争を、「地域別」にたどった、教養にも受験にも効く一冊だ。古代の戦争からウクライナ戦争まで、約140の戦争が掲載された、まさに「全史」と呼ぶにふさわしい教養書である。元外務省主任分析官である佐藤優氏も絶賛の声を寄せる本書の内容の一部を、今回は特別に公開する。(初出:2023年2月27日)
朝鮮半島が南北に分裂した理由
太平洋戦争後、米ソの冷戦のもとで南北に分断された朝鮮半島の覇権争いが「朝鮮戦争」です。1950年に始まったこの戦争は、正確には現在も「休戦」中であり、いまだ最終的な講和には至っていません。
先の日露戦争にて勝利した日本は、大韓帝国の指導権を獲得しました。そして1910年には大韓帝国を日本の領土として併合します。しかし、太平洋戦争で日本が敗れると、朝鮮は日本の植民地支配から脱することになりました。
「これでやっと独立できる」と思った矢先、朝鮮半島は北緯38度線を境界として北半分をソ連に、南半分をアメリカに占領されてしまいました。アメリカとソ連は共同委員会で統一方法を模索しますが、両者の対立は深まり、交渉は決裂してしまいます。
その結果、南側は「大韓民国(以下韓国)」、北側は「朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)」として南北が分立し、それぞれが独立してしまいました。韓国の初代大統領は李承晩、北朝鮮の初代首相(のちに主席)は金日成が務めました。
北朝鮮の金日成は、1950年に南北統一を目指して韓国に侵攻しました。これが現在まで続く、朝鮮戦争の始まりです。
休戦協定を結ぶも、両者はにらみ合いを続けている
奇襲を仕掛けた北朝鮮軍は快進撃を続け、一時は朝鮮半島の南端プサン以外の韓国領土を占領するに至りました。
これに焦ったのがアメリカです。このまま朝鮮半島が北朝鮮によって統一されれば、朝鮮半島が丸ごとソ連の影響下に入ってしまいます。そこで、アメリカは国連を利用しました。当時、国連の安全保障理事会をソ連がボイコットして欠席しており、実質的にアメリカに拒否権を行使する国はいなかったからです。
アメリカは安全保障理事会で北朝鮮軍の行動を侵略と認めさせ、国連軍を編成して韓国の支援に向かわせました。おかげで韓国軍は攻勢を強め、あっという間に北朝鮮軍を後退させます。さらに韓国軍は、38度線に達してもなお攻撃を続け、今度は韓国が中国との国境付近にまで北朝鮮を押し返しました。
それに対して、今度は中国が焦りました。中国はソ連側の陣営に属していたので、自国と国境を接する国がアメリカ陣営になるのは困ります。そこで、今度は中国が北朝鮮を支援して軍を投入した結果、戦況は膠着し、もともと南北を区切っていた38度線を挟んでの攻防が続きました。
泥沼化してきた戦局を見かねて、1953年には両国の間で休戦協定が結ばれました。これは「講和」ではないので、実はいまだに戦争は継続しているのです。現在も韓国で徴兵制が敷かれているのはこのためです。
この戦争をきっかけに、アメリカはソ連陣営の国がこれ以上拡大しないように、より積極的な政策をとることになります。また、当事者である朝鮮では、家族が韓国側と北朝鮮側に分かれてしまう離散家族問題などが生じました。地理的に朝鮮半島に近かった日本には、戦争中にアメリカ軍が使う物資などの発注が殺到し、戦後間もない日本の景気を支えました(朝鮮特需)。
(本原稿は、『東大生が教える戦争超全史』の内容を抜粋・編集したものです)
東大カルペ・ディエム
現役の東大生集団。貧困家庭で週3日アルバイトをしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、全国複数の学校でワークショップや講演会を実施している。年間1000人以上の生徒に学習指導を行う。著書に『東大生が教える戦争超全史』(ダイヤモンド社)などがある。