「食道」は、食べたり飲んだりしたものを喉から胃まで運ぶ細長い臓器。ここでの炎症やトラブルは胃や胸、喉など他の臓器に起因するものが多く、どこで診察すればいいかわからないケースが多い。どんな病気が考えられるのか。専門医が詳しく解説する。(取材・文/医療ライター 南雲つぐみ)
成人の3人に1人は
胃酸の逆流による症状を抱えている
「みぞおちから喉にかけて、ギューッと痛みが上がってくる」「風邪でもないのに咳がとまらない」「喉に違和感」「夜中に胸の痛みで目が覚める」――こんな痛みや不快感の原因は何でしょう。
喉元から胸部には、心臓、肺、咽喉頭(喉)、食道、胃と重要な臓器が幾つも入っているため、どの病院へ行けばいいか迷ってしまいます。迷った末に放置し、症状を悪化させてしまう人もいるかもしれません。
「心臓や肺の異常は直ちに命に関わることもあるので、まずは循環器内科や呼吸器内科を受診、喉に違和感があれば耳鼻咽喉科に行きましょう。しかし、検査を受けて心臓や肺、耳鼻咽喉に異常がないことがわかったら、痛みの原因として食道のトラブルである『逆流性食道炎』あるいは『胃食道逆流症』の可能性を考える必要があります」
胃や食道など消化器の病気と内視鏡手術の専門医である関洋介先生(四谷メディカルキューブ消化器外科)は、こう解説します。「今、成人男女の3分の1が、これらの食道の症状を抱えているとされています」
「逆流性食道炎」は比較的よく聞く病名ですが、「胃食道逆流症」とどう違うのでしょうか。
「どちらも胃酸を含む胃の内容物が逆流して食道の粘膜を刺激するために、胸やけ、げっぷなどの症状が起こります。ただし、胃酸が逆流しても、食道粘膜に炎症(びらん)や潰瘍などは見られない場合もあります。炎症があってもなくても、症状がある状態を総称して『胃食道逆流症』と呼んでいます」