みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜ京都のホテルは駅前以外にも分散しているのか?Photo: Adobe Stock

京都はインバウンドでスーパーホテルが3万円に!

 長年全国津々浦々に出張していますが、かつてホテルの手配をしていて、衝撃を受けたのが京都のホテル価格の高騰です。

 2014年あたりからインバウンド需要が急増し、日本全国どこにいっても外国人を見かけるようになりました。当時は急増する需要に国内の観光インフラが追いついておらず、観光地ではホテル不足が問題になりました。

 特に外国人に人気のある京都では春の桜の時期と秋の紅葉の時期には、普段6000円程度で泊まれるスーパーホテルが3万円もするような事態に陥りました。その後は増加するインバウンド需要に対応するために、日本中でホテルの建設ラッシュが続き、現在では地方も含めて多くのホテルが立ち並んでいます。

京都はターミナル駅以外にホテルが分散

 しかし、そんな中でよく感じるのは多くの都市でターミナル駅の周辺にホテルが集中しているのに比べ、前述の京都ではターミナル駅である京都駅から離れた場所に立地するホテルが多いということです。

 京都市の人口は約145万人ですが、約163万人の福岡市や約134万人のさいたま市ではターミナル駅の博多駅、大宮駅周辺にホテルが集中している印象です。

 それは一体なぜでしょうか? 答えは建物の高さに厳しい制限があって高い建物を建てられないからです。

 京都市では、全国でも例を見ないほど厳しい高さ制限を課した「新景観政策」を2007年に導入しました。高さの上限をそれまでの45mから31mに引き下げ、更に地域ごとに31~10mの6段階に設定しています。

 政策導入の目的は京町家や山並みが見える京都ならではの景観が損なわれないようにすることです。火床で大きな文字を作り、文字に点火する「五山の送り火」が見えなくならないように、高さの制限は山側へ行くほど低く設定されています。

 31mというとオフィスビルだと7~8階、マンションだと10階くらいになります。京都の不動産事情の特徴としてタワーマンションが無いのはこの高さ制限が影響しています。

 このように京都では高い建物を建てることができないので、土地面積当たりのホテルの部屋数は少なくなってしまいます。そこに前述のようなインバウンド需要の急増でホテル不足が深刻になり、京都駅から離れた立地のホテルが増えたわけですね。ホテルだけでなく、オフィスビルも全般的に分散しているため、企業のオフィスも同規模の福岡市やさいたま市と比較すると分散して所在しています。

周辺部への人口流出で高さ制限緩和の動き

 しかし、2023年4月から京都市は建物の高さ規制を一部地域で緩和しました。

 前述のように高さ制限があることでマンションの供給戸数が東京や大阪と比べて大幅に少なく、慢性的に不足している状態です。小規模なマンションが中心で価格も高いため、若年層や子育て層が周辺部へ流出している実態が問題視されていました。

 景観を守ることと、住みやすさや人口動態のバランスなど、市民からも様々な意見が出ており、高さ制限の緩和も賛成派と反対派による議論が続けられています。

 個人としてもビジネスパーソンとしては効率的な街になった方が良いと思う反面、観光客としては京都の景観を守ってほしいという気持ちもあり、複雑な思いですね。

なぜ京都のホテルは駅前以外にも分散しているのか?

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)