みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。
ガソリン価格は地域によってリッター16円以上差がある
仕事柄、日本全国様々な場所に行く機会があります。コロナ禍で一時的に出張は減ったものの現在ではコロナ前と変わらず出張をする生活に戻っており、現在は飛行機と新幹線の合計利用回数は年間120回以上となっています。
そのように全国を周遊する中で、あることに気づきました。それは何かというと、ガソリン価格は地域によってだいぶ差があるということです。
ガソリンの店頭価格は店舗ごとに差がありますし、フルサービスよりもセルフのスタンドの方が安いです。また会員割引などで更にお得に給油できることもあります。
しかし、店舗ごとやサービスの差以上に大きな価格差が地域によってあります。出張しながら意識して確認すると地域によって10円以上価格差がありました。
どの地域が高くてどの地域が安いのか? gogo.gsという、全国のガソリン価格やガソリンスタンドのサービス情報を共有する、ガソリンスタンド情報共有サイトがあったので調べてみました。
このように1位の和歌山県と47位の高知県では16.7円も差があります。約1割も高いわけですね。昨今は原油と円安の影響でガソリンの店頭価格が高くなりましたが、“ついにリッター170円を突破!”のような記事は高知県民からすると、そんなに安く買えるならまだマシという気持ちなのかもしれません。
ガソリン価格変動要因は輸送費
さて、それでは地域によってこんなにガソリン価格に差が出るのでしょう?
要因は輸送費の違いのようです。ガソリンスタンドへのガソリンの輸送は製油所から直接輸送されるケースと、油槽所という二次基地を経由して輸送される2つのケースがあります。
輸送費は当たり前ですが、距離が長いほど高くなります。そのため製油所や油槽所から遠いエリアほど仕入価格は高くなり店頭価格も上がるということです。上位5県の中で和歌山県、北海道、千葉県、愛知県には大きな製油所があるため、店頭価格も低く抑えられていると考えられます。
しかし和歌山県は2023年10月にENEOS和歌山製油所が閉鎖され、今後ガソリンの店頭価格にも影響が出るかもしれません。下位5県は製油所からの距離も遠く、山間部や離島が多いエリアなので輸送費が高いエリアが多く、店頭価格の高さに影響していると思われます。
なお輸送費で言えば一番高そうなのは、沖縄県です。最南端の製油所は九州の大分県にあるため長距離輸送を余儀なくされる上に離島も多いので、全般的にガソリン価格も高そうです。
しかし、予想に反して沖縄県は29位と全国平均より若干高い程度です。実は沖縄県では返還される際に定められた「沖縄復帰特別措置法」により『揮発油税』が軽減されているため、他の地域に比べるとリッター7円ほどガソリンが安くなっています。
地域の中での最高値はサービスエリア
なお地域以外の要因でガソリンが高いなと感じるのは高速道路のサービスエリアです。
同じ地域の他のスタンドと比べて10~20円も高い価格になっています。皆さんの中でも高速走行時にどうしても給油せざるを得ない状況に陥り、苦汁の決断で高い価格で給油した経験がお持ちの方も多いでしょう。
サービスエリアのガソリン価格が高い理由として、NEXCOの見解としては、24時間営業のため人件費が高くなる、車検やメンテナンスなど給油以外の収入が無いのでガソリンで利益を上げないといけないなど、もっともらしい理由を挙げていますが、一番大きな理由は価格競争が無いことでしょう。駅弁の販売と一緒で、競争が発生せず他に選択肢がない場合は多少割高でも購入するものです。
近年は燃費の向上もありガソリンスタンドの閉鎖が相次いでいます。
NEXCOとしては高速道路のガソリンスタンド空白地帯を発生させたくないので、サービスエリアのガソリン価格にはあまり強く言えないという側面があるのかもしれませんね。
(本原稿は、平野薫著『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』を抜粋、編集したものです)