運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。
お正月、飲み過ぎましたか?
内臓脂肪と紛らわしいのですが、心臓、肝臓、骨格筋(筋肉)など、本来つかないところにつくのが「異所性脂肪」。
特に心臓の周りにつくものを、テレビなどでは「エイリアン脂肪」と呼んでいます。
エイリアン脂肪は心臓の周りの冠動脈にダメージを与え、心筋梗塞や心不全の原因ともなる恐ろしいものです(※1)。
まるでフォアグラ!?
あるテレビ番組でタレントさんたちのMRI(体の断面を撮影したもの)を撮ったところ、まさに心臓がエイリアンに侵略された方がいて、「身近なリスクだ」と改めて実感しました。
筋肉に異所性脂肪がつくと、焼肉屋さんでおいしくいただく「霜降り肉」と同じ状態になるのですが、これが肝臓につけばまるでフォアグラという「脂肪肝」になってしまいます。
さらにこれが悪化すると肝硬変、非アルコール性肝炎、肝臓がんのリスクとなったり、生活習慣病にもつながります。
自覚症状がないのに、いつの間にか肝臓や心臓をぐるっと取り巻いて、病どころか死に至らせる──異所性脂肪はそんなとても恐ろしいものです。
ウォーキングで撃退できる
ただ食事療法、運動療法によって脂肪肝は確実に軽減します。
その筆頭がウォーキングです。
肝臓の医師が真っ先にすすめる運動は「ウォーキング」
運動で肝機能の数値がよくなったというデータは山のようにありますが、肝臓の医師が真っ先にすすめる運動がウォーキングです。
エイリアン脂肪の対策にもウォーキングは有効で、心臓病の発症リスクを抑制します。
エイリアンを撃退しよう
「皮下脂肪」「内臓脂肪」「異所性脂肪」のうち、一番落ちにくいのが「皮下脂肪」で、女性の多くが気にするのもこの皮下脂肪ですが、実は内臓脂肪、異所性脂肪の方がはるかに怖いものだと言えます。
それでいてこの2つは「歩くだけで落ちやすい」という性質があるのですから、どんどん歩いてエイリアンを撃退しましょう。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。
※1 日本肥満学会編集. 肥満症診療ガイドライン2016. 肥満に関する病態.11-13.