今こそ経済に関して楽観的な見方をすべき時だ。インフレ率が下がり続けるかどうかとか、リセッション(景気後退)が回避されるかといった話ではない。ここで取り上げるのは、人類が抱える最も解決困難な課題の幾つか――人工知能(AI)、アルツハイマー病や肥満症のような病気、気候変動――に関する進歩のことだ。米国人は近頃、悲観的になっている。筆者はその考え方を変えられるとは思っていない。筆者はちょうど5年前、世界はどんどん良くなっていると書いた。その後、新型コロナウイルスの世界的大流行や戦争、インフレによって世界の多くの地域で病や貧困が深刻化し、怒りが強まった。また率直に言って、「テクノロジー楽観主義」の正しさはここしばらく証明されていない。経済成長に目立った変化をもたらした飛躍的進歩は、20年以上前の消費者向けインターネットが最後だった。ロボット工学や電気自動車(EV)、ドローン、仮想現実(VR)や3D印刷が経済成長や生産性に及ぼした影響には気づかないだろう。暗号資産(仮想通貨)は、全体としてはデメリットの方が大きい。新薬が毎年発売されるが、自殺やオピオイドの過剰摂取、コロナの影響もあって、最も一般的な指標で見た平均余命は2019年より短くなった。