美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。

吹雪 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』より

「理解してもらうために描いたのではない」風景画のすごさ

ではせっかくイギリスに来たんで、イギリスの画家の有名な作品もご覧いただきましょう。

こちらはロンドンのテート・ギャラリーに所蔵されているターナーという画家によって描かれた作品です。何の絵かわかりますか?

──え、なんだろう…。ぐちゃぐちゃでよくわかんないですが、ものすごいパワーを感じる作品ですね。あ、真ん中に何か細い棒? みたいなのが描かれていますね。これは一体…。

ふふ、よくわかんないでしょう。正解は海の景色、タイトルは「吹雪」です。ほら、真ん中にまっすぐ伸びるマストに旗がはためいて、その後ろには蒸気船の炎が混じった煙が立ち上っていますね。

──あ! ほんとだ! そう言われたらもうそういう風にしか見えませんね!

イギリスでは風景画も正当に評価されてきました。そんな風景画をけん引した画家がターナーだったんです。

初期のターナーはありきたりな風景を描いていましたが、次第にもっと大自然がはらむ凄まじいエネルギーを表現したいと感じるようになりました。

そうして彼が到達した絵画は、大気や水、光、炎が渦を巻くような自由なフォルムを用いたこのような作品だったんです。

──なるほど~! だからぐちゃぐちゃに見えるんですね! そう言われたら見れば見るほど風景が溶け合っているのがわかってきます!

そうですよね。でも残念ながらこの絵は発表当時、まるで酷評の嵐「何が描かれてあるのか全くわからない!」と言われたそうです。

──まぁ…確かに。今の僕たちにならわかるけど、その当時にしては新しすぎたんでしょうね。ターナーはそんな反応になるとは予測できなかったんでしょうか?

いえ、もちろんわかっていましたよ。だけどターナーはわかった上でそれでも描きたかったんです。

だからターナーは「私は理解してもらうために描いたわけではない。ただ、このような情景が実際にはどんなものなのか示したかったのだ」と語ったそうです。

──カックいい~! なんか漢気を感じますね!

でしょ? そうそう、この絵にはもう一つ漢気エピソードがあるんですよ?

──え! どんなのですか!?

ターナーはこの絵を描くために、嵐の中船を出してもらい、乗組員に頼んでマストに縛り付けてもらって4時間も嵐の海を観察したと言われていたんです!(現在この逸話の信憑性は低いと言われています)

──とんだドMじゃないですか!(笑)

漢気エピソードをドMと表現するのやめてもらえますか?(笑)

(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)