美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。
エルミタージュ美術館の守護神として大切にされる「貴族猫」様
そうそう、世界三大美術館の一つ、エルミタージュ美術館は美しいまま残されてきたんですが、実はその一翼をになっているのが、この美術館にすむ猫なんです。
──ね、猫ですかぁ? なんなんですか? 猫のおかげって! なんなら猫なんかいたら美術品を荒らしちゃいそうですが…(汗)。
はは(笑)。確かにそう思いますよね? でも本当なんです。猫がいることで美術品が何かから守られてきたんですが…。
──まさか! ネズミですか!?
ピンポンピンポーン! まさにネズミです。
18世紀、宮殿生活は栄華を極めましたが、それと共にネズミも増加し、絵画をかじられたりする被害に悩まされていたそうです。
そんな中、女帝エリザベータの時代に、絵画のコレクションをネズミから守るため宮殿に猫を置くように命じたとされています。
そしてその猫が今でも飼われ続けているんだそうです。
──ほえ~! 実写版トムとジェリーですね(笑)。ちなみに山上さんは館内で猫を見かけたことはあるんですか?
残念ながらないんです(涙)。
というよりも、以前は美術館のギャラリー全体を歩き回っていたらしいんですが、どうやら現在その猫たちは冬の離宮の地下で飼われているらしくって、足元の配管からかすかな鳴き声が聞こえる程度なんだとか。
そしてその名誉な猫たちは「貴族猫」と呼ばれ、まるで王族のような暮らしをしているそうです。
──王族のような暮らし! どんなのなんでしょう。
彼らは「猫の家」と呼ばれるお部屋に住み、食事などの世話はエルミタージュの職員さんがしてくれて、体調が悪い場合には獣医さんも来てくれるそうですよ。
あと、猫専用の報道官もいて、美術館の守護神として売り出されています。
──想像以上に貴族でした(笑)。見てみたいな~! 貴族猫!
ふふ、そうでしょう。実はそんな方へ特別な情報があるんです!
エルミタージュには「エルミタージュの猫の日」という、この小さな番人たちのために毎年春に開催される1年に1度のお祝いがあります。
この日は普段立ち入ることのできない猫が暮らしている地下スペースが開放されて、実際の猫の住まいを見たり、猫と触れあったりすることができるんです!
──えー! いいけど年に1回って。ケチすぎるでしょ~(汗)。
ほんとですよね(笑)。でももしかしたらひょっこり顔を覗かせる猫が現れたりして?
──美術品そっちのけで猫探ししちゃいますよ(笑)。
(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)