みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜマヨネーズは450gを買うべきなのか?Photo: Adobe Stock

店頭価格を見ると「大容量=割安」は必ずしも正しくない

 最近は家族構成も多様化しており、調味料売り場を見ると様々な容量の商品が並んでいます。私がかつて所属していたキユーピーの市販用マヨネーズも現在では8種もの容量の商品がラインナップされています。

 皆さんは、どの容量のマヨネーズを購入していますでしょうか?

 特にスーパーで購入するのであれば450gのマヨネーズを購入すべきです。

 いやいや自分のようなどんな料理にでもマヨネーズを使ういわゆる“マヨラー”はお得な大容量が向いている、と考える方もいるかもしれません。

 実際にキユーピーのHPにある参考小売価格(税込)を見てみるとg単価は容量が大きいほど割安になっています。

●キユーピーマヨネーズ容量別参考小売価格
容量130g 参考小売価格(税込)194円 参考小売価格(税込)g単価1.49円
容量200g 参考小売価格(税込)272円 参考小売価格(税込)g単価1.36円
容量350g 参考小売価格(税込)430円 参考小売価格(税込)g単価1.23円
容量450g 参考小売価格(税込)520円 参考小売価格(税込)g単価1.16円
容量700g 参考小売価格(税込)783円 参考小売価格(税込)g単価1.12円
容量1000g 参考小売価格(税込)1107円 参考小売価格(税込)g単価1.11円
出典:キユーピーHP(情報更新日:2023年6月1日)

 しかし、実際には大容量=割安というのは必ずしも正しいわけではありません。下記の図表は近所の某スーパーで実際に販売されていたキユーピーマヨネーズの店頭価格です。

 なんと、驚くべきことに450gは容量の小さい350gより安く、g単価で見ても容量の大きな700gよりも割安でした。

なぜマヨネーズは450gを買うべきなのか?

目玉商品は政策的に安く売る

 一体なぜこのような逆転現象が起きるのか? それは売れ筋である450gは買い物客にとってそのスーパーの値頃感の判断基準になり、集客のためのチラシの目玉商品になりやすいからです。

 小売業にはロスリーダーという考え方があります。ロスリーダーとは集客数を上げるため、収益を度外視して極端な低価格で販売する目玉商品のことを指します。

 皆さんも小売店のチラシを見て、お買い得な商品目当てに来店することがあると思います。店側としても来店してもらいそれ以外の商品も購入してもらえれば全体として収支は合うと考え、多少損をしてでも目玉商品を用意します。そのため集客に繋がる売れ筋商品は政策的な価格設定にしているというわけですね。

 なおマヨネーズに限らず、この日に店頭ではソースやウイスキーなど売れ筋の容量のものが小さな容量のものよりも安い価格で販売されていました。

鮮度の観点からも大容量を買うべきではない

 更に食品でいうと、鮮度の観点からもあまり大容量のものはオススメしません。現在マヨネーズの賞味期限はチューブタイプのもので10~12ヵ月となっています。それだけの期間があれば容量が大きくても使い切れると思われそうですが、メーカーのHPには下記のような文言があります。

「開栓後は賞味期限に関わらず、冷蔵庫(1℃~10℃)に保存し、1ヵ月を目安に召しあがってください。」

 マヨネーズは主成分が油と酢なので、防腐剤などを入れなくても腐敗することはありません。しかし一度空気に触れると原料である油が徐々に酸化し、味が落ちていってしまうためメーカーとしては開栓後早めに使用することを推奨しています。

 また冷蔵庫の調味料スペースも調味料は400~500g程度のチューブを入れることを前提としており、1kgのチューブは出し入れが大変です。

 実はメーカーとしても売れ筋が売れてくれるのが一番ありがたいのです。ニーズの多様化から昨今は様々な容量がラインナップされています。最近では小ロット多品種生産に対応してきているものの、やはり同じものを大量に作って販売する方が生産面でも物流面でも低コストです。どこのメーカーでも売れ筋商品の利益率が一番高いからです。

 このようにお得に美味しく、冷蔵庫のスペースとメーカーの効率を考えてもマヨネーズは450gを買うべきなのです。

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)