みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜアメリカ人は多額の寄付をするのか?Photo: Adobe Stock

アメリカの個人寄付額は日本の30倍

 2022年9月、アウトドア用品大手、パタゴニアの創業者であるイボン・シュイナードが本人と家族で保有する同社の発行済み株式の全て(30億ドル)を環境NPOなどに寄付したことが話題になりました。

 著名投資家のウォーレン・バフェットも個人資産の99%以上を占めるバークシャー・ハサウェイの持ち株47万4998株を全て寄付すると表明しており、アマゾン・ドット・コムの創業者で会長を務めるジェフ・ベゾスも1240億ドルにのぼる個人資産の大半を寄付する意向を発表しています。

 アメリカではマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツらが社会貢献キャンペーン「ギビング・プレッジ」を立ち上げ、世界の富豪に資産の半分以上を慈善活動に寄付することを呼びかけるなど富裕層の寄付が盛んです。

『寄付白書2021』(日本ファンドレイジング協会)によるとアメリカの個人寄付額は34兆5948億円にのぼり、日本の約30倍です。名目GDP比で見ても人口一人当たりの寄付額で見てもケタ違いの規模となっています。

なぜアメリカ人は多額の寄付をするのか?

 このようにアメリカ人は多額の寄付をしていますが、その背景にあるものは一体何なのでしょうか?

アメリカ人が多額の寄付をする理由

 まず一つに宗教的な背景があります。

 キリスト教の精神の一つに「富める人は貧しい人に分け与えるべき」というものがあり、ユダヤ教でも戒律の中で慈悲を挙げています。このように根底には神の教えに沿って寄付をするという部分があります。

 また貧富の差が大きいことも要因の一つです。ご存じのようにアメリカにはGAFAMの創業者や前述のバフェットのような投資家など想像を絶する富豪がいる反面、貧しい生活をしている人々もたくさんいます。そんな状況を目の当たりにして人として自分だけ良ければいいのか? と考えることもあると思います。

 ビル・ゲイツが、過去テレビのインタビューで寄付について質問され、「消費には限度があり、本当に自分が価値があると思えるものが何なのかを、考えなくてはいけない」とコメントしています。

 以前ある富裕層の方が資産が10億円を超えるあたりから資産が増えることによる効用は低下するし、生活水準もあまり変わらなくなってくると聞いたことがあります。実際、個人資産が1000億円でも2000億円でも生活は変わらないと思うので、いかにして人のためにお金を使うべきかと考えるようになりそうですね。

 このように宗教的・格差の背景から寄付をすることが文化として根付いているのだと思います。アメリカを旅行すると分かりますが、学校、図書館、研究所、美術館、博物館など、寄贈者の名前が付いた建物がとても多いです。日本だとそういうことをすると時に「売名行為」と揶揄されることがありますが、アメリカでは教育や芸術を支援し、名前を記すということが名誉であり賞賛されるべきことなのです。

 なおアメリカでは前述のような富豪の寄付が話題になりますが、実は一般人も日常的に寄付を行っており、約90%の家庭が慈善事業に寄付をしているそうです。お金があるから寄付をするというよりも寄付をすることが文化になっています。

世界寄付指数の総合ランキングで日本は119ヵ国中118位

 イギリスの慈善団体「チャリティーズ・エイド・ファンデーション(CAF)」が毎年発表するWorld Giving Index(世界寄付指数)2022では「この1ヵ月の間に、見知らぬ人を助けたか?」「この1ヵ月の間に寄付をしたか?」「この1ヵ月の間にボランティアをしたか?」の3つの項目に対する調査を行っております。

 日本は3つの総合ランキングで119ヵ国中118位という残念な結果となっています。

●寄付に関する残念なランキング
総合ランキング  順位 118位/119ヵ国中
この1ヵ月の間に、見知らぬ人を助けたか?  順位 118位/119ヵ国中
この1ヵ月の間に寄付をしたか?  順位 103位/119ヵ国中
この1ヵ月の間にボランティアをしたか? 
 順位 83位/119ヵ国中

※World Giving Index(世界寄付指数)2022<CAF>を基に作成
https://www.cafonline.org/docs/default-source/about-us-research/caf_world_giving_index_2022_210922-final.pdf

 以前ある方から、「お金持ちになったら寄付をしようと思っている人は、結局お金持ちになっても寄付しない」という話を聞かされてハッとしたことがあります。

 人間はやはり自己中であり、物欲もあります。しかし、今の自分の生活を与えてくれている社会に対する感謝の想いを込めて小さくてもできることをやってみようと思いました。

 そのお話をしてくれた方が、毎年自分の誕生日に一年無事に過ごせたことの感謝の意味を込めて寄付をしていると聞いたので、私もそれ以来同じように(少額ですが)誕生日に寄付をし始めました。現在では毎月定期的に2箇所に寄付をするようにしています。

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)