「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」は、かつては高齢者がかかる病気のイメージがありましたが、最近は20~40代の間で急増しています。どういった病気なのか、そのメカニズムと症状、後遺症やワクチン事情まで、専門医に話を聞きました。(取材・文/フリーライター 楠本知子)
水ぼうそうにかかったことのある人は予備軍
「帯状疱疹とは、皮膚に分布している神経の走行に沿って水ぶくれを伴う皮疹(皮膚の病変)が帯状に現れる病気です。皮疹が現れる3~5日前から、痛みやかゆみなどの違和感(前駆痛)があるのが特徴です」と話すのは、順天堂大学皮膚科の木村有太子先生。
皮疹が現れるより先に痛みが起こることが多いため、おなかに症状が出て消化器内科に行ったり、頭が痛くて脳神経内科に行ったりしても異常が見つからず、数日後に皮膚症状が出てきて帯状疱疹と診断されるケースもあります。
皮膚に症状が現れて初めて診断が付く病気なので、痛みが出た時点で帯状疱疹と診断することはできません。皮膚がピリピリする、むずがゆいなどの違和感を覚えたら、その後数日は気を付けて皮膚を観察するようにします。
この時点で間違われやすいのが虫刺されやじんましんです。
「帯状疱疹の初期には、虫刺されやじんましんと間違われることも多くあります。自分で診断することは難しいので少しでもおかしいと感じたら早めに皮膚科を受診しましょう」
どのような人がかかる病気なのでしょうか。
「水ぼうそうを引き起こすウイルスを水痘・帯状疱疹ウイルスといいます。このウイルスに最初に感染したときは水ぼうそうとして発症しますが、治った後もウイルスは死滅せずに体内に潜み続けます。これが加齢やストレス、過労などが引き金となって発病するのが帯状疱疹です。過去に水ぼうそうにかかったことのある人なら誰でもかかる可能性がある病気です」
日本では80歳までに約3人に1人が罹患(りかん)するとされており、帯状疱疹になった患者全体のうち約7割が50歳以上というデータがありますが、近年は20~40代の発症も増えてきています。