イスラエルとイスラム組織ハマスの停戦の仲介やガザ地区の復興を巡り、エジプトの動きが活発化している。その深い理由を、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が読み解く。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
休戦案のイニシアチブを取ったのは
エジプトだった
ガザ地区で続く戦闘に関して、新たな動きがありました。1月30日のロイターは、「ハマス、3段階の休戦案を検討 エジプトなど4カ国が提案」と題する記事で、こう伝えています。
カタールの首相やエジプトの政府高官のほか、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官、イスラエル情報当局トップがパリで会談し、ハマスに提案した。
この案は、イスラエルとハマスが双方の軍事作戦を停止した上で、次の3段階を実施しようというものです。
(1)高齢者や民間人女性、子ども、負傷者などの解放。ガザへの食料・医薬品の提供再開。
(2)女性イスラエル兵や男性新兵の解放。ガザへの支援物資の提供拡大。公共サービスの再開。
(3)パレスチナ人囚人の解放と引き換えに、死亡したイスラエル軍兵士の遺体を移送する。
4カ国による提案という形ですが、イニシアチブを取ったのはエジプトだと思われます。というのは、1月4日のロシア紙「イズヴェスチア」に、興味深い記事が載っていたからです。ブロホル・ドレンコ記者による「和平への抵抗:ガザ地区での戦争終結の見通しは? イスラエルの地上作戦はいつまで続くのか?」と題する論評です。
イスラエルによる対ハマスの基本戦略を説明した後、エジプトの動きが積極的になっていることを取り上げています。エジプトが独自に計画している「3段階の停戦案」の詳細を説明しているのですが、その中には次のような内容が含まれています。