目的工学は、組織メンバー全体を
一体化するための方法論

 組織は人間の集合体であり、そこにはさまざまな人たちがおり、考え方や価値観、働く動機もバラバラです。大目的に目覚めて「社会のために」働いている人もいれば、「生活のために働いている」人もいるでしょうし、「とにかく出世したい」という上昇志向の人もいれば、「他人にはできないことをやってみたい」という野心家、「ここでいろいろな経験を積んでもっとよい会社に転職したい」というキャリア志向の人もいるでしょう。このように動機が異なれば、その目的(パーパス)も当然異なります。

 経営学における古くて新しい課題の一つが、組織メンバーを一つにまとめることです。何しろ組織というものは、一人ではできないことを、複数の人たちの力によって成し遂げるために生まれたものです。しかし残念なことに、これまでの手法の「成功率」はあまりほめられたものではなさそうです。

 われわれは、その最大の原因を「大目的の不在、あるいは喪失」にあると考えています。組織メンバーのさまざまな目的 ― なかには相容れないもの、荒唐無稽なものもあるでしょう ― を調整しながら、大目的に向かってメンバー全員を一体化するための方法論、これが目的工学の目指すところです。そして、その大目的は言うまでもなく、「世界じゅうの人々の幸福」を企業や組織、個人が実現する道筋を見出すことです。

 さぁ、みなさん、一緒に目的工学を研究してみませんか。

(今後もさまざまな形で目的工学を紹介していく予定です。)


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『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのかーードラッカー、松下幸之助、稲盛和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則』

「目的工学」(パーパス・エンジニアリング)で<br />よりよい未来をつくろう<br />――本文から(その6)

アインシュタインも語った――「手段はすべてそろっているが、目的は混乱している、というのが現代の特徴のようだ」
利益や売上げのことばかり考えているリーダー、自分の会社のことしか考えていないリーダーは、ブラック企業の経営者と変わらない。英『エコノミスト』誌では、2013年のビジネス・トレンド・ベスト10の一つに「利益から目的(“From Profit to Purpose”)の時代である」というメッセージを掲げている。会社の究極の目的とは何か?――本書では、この単純で深遠な問いを「目的工学」をキーワードに掘り下げる。

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紺野 登(Noboru Konno)
多摩大学大学院教授、ならびにKIRO(知識イノベーション研究所)代表。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。その他大手設計事務所のアドバイザーなどをつとめる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(経営情報学)。
組織や社会の知識生態学(ナレッジエコロジー)をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、研究所などのワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。
著書に『ビジネスのためのデザイン思考』(東洋経済新報社)、『知識デザイン企業』(日本経済新聞出版社)など、また野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)との共著に『知力経営』(日本経済新聞社、フィナンシャルタイムズ+ブーズアレンハミルトン グローバルビジネスブック、ベストビジネスブック大賞)、『知識創造の方法論』『知識創造経営のプリンシプル』(東洋経済新報社)、『知識経営のすすめ』(ちくま新書)、『美徳の経営』(NTT出版)がある。

目的工学研究所(Purpose Engineering Laboratory)
経営やビジネスにおける「目的」の再発見、「目的に基づく経営」(management on purpose)、「目的(群)の経営」(management of purposes)について、オープンに考えるバーチャルな非営利研究機関。
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