30代で東証プライム上場企業の執行役員CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)となった石戸亮氏が、初の著書『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)で、デジタル人材の理想的なキャリアについて述べています。
デジタル人材は、ビジネスの現場でどのように求められているのか。
本当に需要のあるデジタル人材として成長するためには、どんなスキルを身につければいいのか。
デジタル人材を喉から手が出るほど欲している企業に迎え入れられ、そこで重用されるには、どんな行動を取ればいいのか。
本連載では、デジタル人材として成長するためのTo Doを紹介していきます。

【CDOの考え】役員になる人がヒラの頃からやっていた習慣・ベスト1Photo: Adobe Stock

会社のこれからの動きをいち早く察知する

 ビジネスパーソンが飛躍できるかどうかは、いかにセルフスタートスイッチを押せるかどうかにかかっています。会社から指示が下る前に、自分で動けるかどうか。そのためには、会社がやろうとしていることを前もって把握しておく必要があります。
 会社がやろうとしていることを知るための情報源は、大きく3つ。

「経営者の意思と資源」「競合他社の動き」「市場(消費者や業界、技術進化)の動き」です。

「経営者の意思と資源」は上場している会社であれば、決算資料とそれに付随する自社の売上や利益率を把握しておけばわかります。決算説明会や株主総会の質疑応答を公開している会社は、それを見るとより深い理解ができます。私が20代の時にサイバーエージェントの株主総会や決算説明会に参加する機会があり、当時の中山常務の決算説明と藤田社長の質問に対しての回答を直に聞いて、少しだけ自分ごと化が進んだ体験があります。

「競合他社の動き」もその会社の決算資料を読めば同様にわかります(「市場の動き」は、「今月、自社のお客さま何人に話を聞いたか?」「競合・同業サービスの顧客の声を最近いつ聞いたか?」で前述しました)。
 しかし自社はともかく、なぜ他社の決算資料も読む必要があるのでしょうか。それは、経営者というものは現場以上に競合の動きを意識しているからです。

 たとえば、自社と似たような製品を作っている競合他社が、海外で物凄く売上をあげていたとしましょう。すると経営者は経営会議で「なぜうちも海外で展開していないんだ!」と話し、それが現場に下りてきて「インドネシア事業部ができたから、お前ちょっと行ってこい」となる。
 そこまで素早い意志決定になるかは別として、普段から競合他社の動きを把握している社員にはその文脈が理解できますが、そうではない社員には寝耳に水です。

 普通、一般社員は経営会議に参加できません。でも自社や競合他社の決算資料を読んでアンテナを研ぎ澄ましておけば、それを元に、経営陣が経営会議でどんなことを話したのか想像がつきます。会社が舟をどこに向かって漕ごうとしているのか、どういう道を選ぼうとしているのか、その道筋や市場感のようなものに対する感度が上がっていきます。だから「インドネシア事業部ができたから、お前ちょっと行ってこい」が、寝耳に水にはなりません。

 決算資料の読破は、私もサイバーエージェント時代に実践していました。
 変化が速いインターネット業界ですので、同業のインターネット企業が決算を発表すると、役員の皆さんは当日中に目を通し、必要な内容はタイムリーに役員会で共有や議論をし、その翌日には各部署に指示が下りてくるのが通例でした。私はその役員たちと同じタイミングで各社の決算資料を読み込むようにしていたのです。そうしておくと、「A社は来期にこういうことをしそうだな、B社はこういうことをしそうだな、じゃあうちは……」などと、自社の向く先をある程度想像できるので、指示を受けての受け身の仕事ではなく、先手で戦略を立てる癖をつけることができました。

 これはインターネット業界に限った話ではなく、どの業界にも当てはまると思います。

※本稿は『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。