ドラゴンボールの孫悟空2019年11月にスペイン・バルセロナで開催された「NiceOne Barcelona Gaming & Digital Experiences Festival」で展示されていた「ドラゴンボールZ」のグラフィックポートレート Photo:Sipa USA/JIJI

「ドラゴンボール」「Dr.スランプ」などの名作を生み出した人気漫画家、鳥山明さんが3月1日に亡くなった。ドラゴンボールは世界80カ国以上で発売され、累計発行部数は2億6000万部を超える。日本人が意識していないドラゴンボールのすごさを、報道と世界の研究論文から紐解く。(イトモス研究所所長 小倉健一)

日本人が意識していない
ドラゴンボールのすごさ

 私たちが、ドラゴンボールについて考えるとき、あまり深く考えることはないのではないだろうか。それは宮崎駿アニメのように深く考えろと要求されることもなく、ダジャレや奇想天外なストーリーに魅了され、そしてまた説教くさくないという特性があるためだろう。

 しかし、鳥山明が亡くなった今、一度だけでも、少し鳥山明のすごさについて「熱狂した」「ジャンプ黄金時代を支えた」「印税がすごい」以外の言葉で考えてみるのもいいのではないだろうか。

 ドラゴンボールが面白いのだからそれでいいではないかと言われればそれまでだが、少しだけなぜ面白いのかについてお付き合い願いたい。そう難しくはならないと思う。

 ドラゴンボールは世界中で大ヒットしたが、スペインでも同じだ。話はそれるが、フランスのマクロン大統領が、鳥山明の愛好家の数を「何百万もの」と表現したが、それでは読者の数から考えて、あまりに少ない。「何千万もの」や「何億もの」に訂正すべきだ。フランスでの放映時の最高視聴率は80%を超えている。

 この大ヒットを分析した優れたスペイン人による研究論文「鳥山のドラゴンボールの民話とその他の参考資料」(2014年、グザヴィエ・ミンゲス=ロペス著、スペイン・バレンシア大学)には、私たち日本人が意識していない、ドラゴンボールの思想的分析が施されている。

 ドラゴンボールに熱狂した西洋人にとっても、ストーリー上、最も理解ができないのが「神様」と「ピッコロ大魔王」の存在なのだという。