パナマ運河を通るため、ある日50隻余りの船舶が列をなしていた。プロパンガスの輸送タンカーや食料を満載した貨物船などだ。長引く干ばつの影響で、運河の運営会社は通航できる船舶数を減らし、結果的に待ち時間が長くなっている。船舶が支払う通航料も通常の約8倍に高騰している。
1万1000キロ以上離れたエジプトのスエズ運河では、コンテナ船が海軍による護衛を待っているか、通航を断念して南アフリカの先端を回るはるかに長いルートに向かっている。海運会社は、紅海を通過する間、イエメンの反政府武装勢力フーシ派によるミサイル攻撃やドローン攻撃で乗組員が危険にさらされることを懸念する。
スエズ運河の問題は地政学に関係し、パナマ運河の問題は気候変動に起因するものだが、どちらも世界貿易を揺るがしている。海上輸送の要衝である両運河を通航する貨物量は3割以上落ち込んでいる。多数の船舶がより長距離のルートに迂回(うかい)するため、結果として配送の遅れや輸送コストの上昇をもたらし、地域経済にも打撃となっている。